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ずさんな公文書法運用 首相指示の記録こそ重要

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 記録がないことには、首相が出した指示が正しかったかを後から検証する手立てがない。

 安倍晋三首相が首相官邸で官庁幹部と面談した際、官邸は議事概要などの打ち合わせ記録を一切作成していなかった。

 一方、災害対応などを担う内閣官房について、毎日新聞が幹部と首相の2017年末から約1年間の面談記録を情報公開請求したところ、面談があったことを認めた47件に記録は一件も残っていなかった。

 同年12月、政府の公文書ガイドラインが改定され、「政策や事業方針に影響を及ぼす打ち合わせは文書を作成する」よう官庁に義務付けられた。加計学園の獣医学部新設に絡む記録が関係省庁の一方にしか残っていなかった問題がきっかけだった。

 首相との面談は基本的に政策に重要な影響を及ぼすものであり、記録の義務付けの対象から外れることはありえない。だが、内閣官房は「首相の指示が簡潔明瞭だったから」といった理由で記録していなかった。

 菅義偉官房長官は記者会見で面談記録について、政策を所管する官庁側が「必要に応じて作成・保存する」ものだと主張した。だが、ガイドラインが定めているのは打ち合わせの当事者による記録の作成であり、一方への丸投げなど求めていない。

 最も大事な手続きである首相との打ち合わせの記録が作成されていないのでは、ガイドラインの改定後も、公文書管理法の趣旨が有名無実化していると言わざるを得ない。

 背景には、首相の指示が記録に残ることを嫌う現政権以前からの官邸の意向もあるとみられる。官庁がそれをそんたくし、記録を作ってこなかった可能性がある。

 公文書管理法は公文書を国民の共有財産と定めたうえ、「国の活動を将来の国民に説明する責務」をうたっている。官邸と官庁のこうした姿勢は法律の理念から程遠い。

 歴代大統領の在任中の書類を保存、公開する図書館の開設を法律で定めている米国との差も甚だしい。

 官邸機能が強化された安倍政権だからこそ、ガイドラインの運用を厳格化して打ち合わせの記録、保存を徹底しなければならない。歴史の検証に耐えられる記録を残すことは、政府が国民に対して負う責務だ。

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