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余録

大英博物館がしでかした途方もない文化財破壊として知られるのが…

 大英博物館がしでかした途方(とほう)もない文化財破壊として知られるのが、エルギン・マーブル洗浄事件である。そう、ギリシャ政府が英国に返還要求を突きつけているパルテノン神殿の大理石彫刻群の話である▲1930年代、これらを見ばえよくしようと、金属たわしと研磨剤で白くぴかぴかに磨いてしまったのだ。これら彫刻はもともと彩色がほどこされていたのだが、色の残っていた部分も化学的な分析のできる痕跡(こんせき)もみな削り取られた▲事件の背景には「ギリシャ彫刻は白でなければ」という西欧近代の美意識があったといわれる。過去の文化や生活を時を超えて伝える文化財を、今の価値観や都合で破壊することの罪深さはいくら強調してもしすぎることはあるまい▲こちらは「Wの悲劇」と呼ばれていたそうな。岩手県立博物館の学芸員が出土した金属製の文化財約200点から所有者に無断でサンプルを切り取っていたという小紙の特報である。「W」は切り取った跡の形で、幅約1センチもあった▲うち約30点はすでに5年前に発覚したが、文書訓告処分があっただけで追加調査は行われずじまいだった。当の学芸員は記者会見で謝罪し、切り取りは「保存処理のため」と語ったが、文化財を預けた自治体には何の報告もなかった▲学芸員は金属製文化財の専門家で、自らの権威をたてに恣意(しい)的なサンプル採取をしていたらしい。文化財は過去のご先祖や未来の子孫から今の世代に託された預かり物である。私(わたくし)できる権威などこの世にない。

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