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eスポーツ「クラロワリーグ アジア」異国で奮闘するプロ選手たちの実像

韓国・ソウルの滞在先で練習するゲームウィズのメンバー(右からロラポロン選手、ブロッサム選手、ユイヒイロ選手、焼き鳥選手、ゼロス監督)=2019年5月31日、兵頭和行撮影

 モバイルゲーム「クラッシュ・ロワイヤル」(クラロワ)のeスポーツリーグ「クラロワリーグ アジア」は今シーズンから全試合を韓国で開催することになり、日本から参戦する4チームのうち3チームが韓国に滞在しながらシーズンを戦っている。選手たちは学校を休学したり、家族や友人たちとも別れたりして、言葉の通じない外国で合宿しながら試合と練習の日々を送っている。

ガチンコだったミーティング

デトネーションゲーミングのメンバー(左からルイス選手、れいや選手、ハネハネ選手、天ぷら選手、ピラメキ選手、オダ監督)=韓国・ソウルで2019年5月31日、兵頭和行撮影

 「さすがにこのままではいけないと思った」。今シーズン、初戦から1勝6敗と負けがこんだ「DetonatioN Gaming」(デトネーションゲーミング)のReiya(れいや)選手はチームに危機感を持ったという。ソウル市内に借りた3LDKに監督を含め6人で共同生活をしながら練習と試合の日々を送っていたが、勝てない。Oda(オダ)監督が出した結論は「根本的なところから改善すること」。

 まず監督が選手と1対1で、問題点やチームに関して日ごろ感じていることを聞き取り、全員がいる場で話し合った。その場の雰囲気は「ガチンコだった」=Lewis(ルイス)選手=という。

 そして改善したのが生活スタイルとスケジュール。まずはきちんと起きること。正午に全員で起床し、午後1時に食事をとり、同2時から3時間練習。自由時間をはさみ、同8時から10時までは2人1組になって戦うチーム戦「2V2(ツーブイツー)」を鍛え、それ以降は個人練習。遅い人で深夜3~4時までひたすら練習をする。練習時間は1日12時間以上を確保した。

 その成果は早速PONOS(ポノス)戦で出た。苦手としていた2V2でそれまでとオーダーを変え、ピラメキ選手とHANE×HANE(ハネハネ)選手のペアで臨み、強豪相手にストレート勝ちすることができた。「勝利したことも大きいが、それ以上にチームの方針が固まったので、大きな意味があった」(オダ監督)と手応えを感じている。

 「クラロワリーグ アジア」は2018年3月に発足し、昨年はホーム・アンド・アウェー方式で、韓国、日本、台湾で開催されたが、今年からは韓国1カ国での開催となった。昨年は週末になると開催地まで飛行機で行き来していたが、今年はデトネーションゲーミングとポノス、GameWith(ゲームウィズ)が韓国に部屋を借りて合宿しながら対戦しており、チームや選手たちは生活面で大きな変更を余儀なくされた。

2連敗に監督爆発

ポノスのメンバー(左からラッド選手、コタ選手、みかん坊や選手、フチ監督、ライキジョーンズ選手、テンゴッド選手)=韓国・ソウルで2019年5月31日、兵頭和行撮影

 「2連敗した日はすべての問題が噴き出した」。グループB2位(取材当時)と好調のポノスだが、開幕から2連勝した後、5月5日に韓国の「KING-ZONE DragonX」(キングゾーンドラゴンエックス)、11日に「FAV gaming」(ファブゲーミング)に立て続けに負け、フチ監督の不満が爆発した。「おまえら頑張っていない」

 昨年のシーズン1でアジアナンバーワン、シーズン2で世界4位となったポノスは、各チームからマークされる存在。エースのみかん坊や選手は「敵はフルメンバーが出てくる」、ライキジョーンズ選手は「他のチームと対戦する時は、2番手、3番手に経験を積ませるようなオーダーだが、うちと当たる時はエース級が出てくる」と不満を漏らす。得意技など手の内も研究され、簡単には勝たせてくれない。そんな重圧の中での2連敗だった。

 激しい言い争いだった。「翌日冷静になって考えるとなんてバカなことを話していたんだろう」(フチ監督)と振り返るほど感情的にもなった。だが、チームにとって大きな変革が生まれた。練習時間を確保するため、全員共通のタイムスケジュールを設定することになったのだ。

 午前9時半に起床し、10時から食事と休憩をはさみながら午後9時まで練習。ジムで体を動かし、午前0時に就寝。多少の夜更かしを想定して余裕を持ったスケジュールとした。

 チームはそこから3連勝し、持ち直した。「勝つのは大事だが、負けないと学ばない人が多いので」というフチ監督の言葉に「学びすぎたかな」とライキジョーンズ選手が舌を出した。

ゲーム漬け楽しい

韓国・ソウルのゲームウィズ滞在先の部屋には「適材適所」「時間厳守」の張り紙が=2019年5月31日、兵頭和行撮影

 同じく長期遠征中のゲームウィズ。ソウル市内の滞在先を訪れた。2部屋あり、2段ベッドと大きなテーブルが置かれた十数畳の部屋に通された。壁には「時間厳守」や「適材適所」と書かれた張り紙。ZEROS(ゼロス)監督は「生活面でできる人がやろうと。例えば使ったものは元の場所に戻そうとか、みんなで心がけようという意味です」と説明する。

 「怖いくらい」とゼロス監督がいう成績はこれまで7勝1敗(取材当時)と絶好調だ。強みはチーム力と分析力だ。「みんな仲良くできていて、雰囲気もずっと良い状態を保てている」という。対戦相手の分析は専属のアナリストがいないため、監督とBlossom(ブロッサム)選手が担当している。

 ブロッサム選手はクラロワ歴1年でプロになった逸材だ。うまい人のリプレーを何本も何本も見て覚えたといい、分からないことがあると、プロ選手にツイッターのダイレクトメッセージで質問するなど「自分の好きなことには集中する」という研究熱心なタイプ。対戦相手が過去の対戦でどういうデッキを使い、どういう強みがあるのか、研究に余念がない。

 そうしてまとめた資料をもとにどういうデッキで迎え撃つか全員で話し合う。午前11時に起床し、正午から午後9時まで食事の時以外はゲームをぶっ通しでプレーしたうえ、ミーティングや日常会話も含めゲーム漬けの毎日だが、「プライベートも含めてクラロワに尽きるし、それが楽しい」(ブロッサム選手)という。

絶望から立ち上がる

ファブゲーミングのメンバー(左からおこめちん監督、きたっしゃん選手、けんつめし選手、だに選手、ジャック選手)=韓国・ソウルで2019年6月1日、兵頭和行撮影

 「チームとして絶望的な負け方だった」。5月16日、キングゾーンドラゴンエックスに負けたファブゲーミングのエース、けんつめし選手は試合後、チームのみんなと立ち寄ったマクドナルドの前でただひたすらたたずみ、チームメートがいくら誘っても店内に入ろうとしなかった。「チーム全体にもっと危機感はないのか、温度差があるのかと思ってしまった」と当時の思いを明かす。

 チームの危機を感じたおこめちん監督は早速、ホテルでハンバーガー片手に全員で話し合いを持った。けんつめし選手が危機感を感じたのは、2V2に臨むチームの姿勢。「練習をしても、嫌々つきあっている感じがあったが、そういうところから見直した」。チーム全員で2V2を考えるようになってからは勝率が上がり、チームの状況は好転した。

 ファブゲーミングは唯一、韓国に滞在せず、試合のたびに日本から飛行機に乗って会場に乗り込む“通い組”だ。今シーズンは、新人プロのJACK(ジャック)選手ときたっしゃん選手が入団し、最初は緊張で思うような戦いができず出遅れるというチーム内事情があったが、日本人で初めてクラロワ内プレーヤーランキングで1位を獲得し、鳴り物入りで入団したジャック選手が本来の実力を発揮できるようになったこともあり、順位も徐々に回復している。

 “通い”のため、移動日でまる1日つぶれるうえ、帰国したら1、2日の休みを取るため、練習時間の確保が大きな課題だ。けんつめし選手は「デメリットしかないように見えるが、移動中は嫌でも体を休めることができたり、いったんクラロワから離れることができるので、脳を休めることができる」「移動時間があることで自然とチームメートとしゃべるので、会話は滞在しているよりも増える」と前向きに捉えている。

 また、けんつめし選手の家にジャック選手ときたっしゃん選手が転がり込み、日本で合宿生活を送っており、練習時間の確保という課題の解消にも努めている。「通いを言い訳にしたくない。全員がそう思っている」

決意と覚悟のプロ選択

 今シーズンが韓国開催に決まり、昨年まで学校との二足のわらじを続けてきた選手たちはプロを続けるかどうかの決断を迫られた。

 「同年代の友達と離れてしまうのは抵抗があったが、それ以上に昨年、世界大会に行けなかった悔しい思いが強くて」と大学休学を決めたのはゲームウィズの焼き鳥選手。同じチームのユイヒイロ選手も「リベンジする意味でも専念することにした」と迷いを振り切っている。

 さらに「プロ2年目で休学も2年目」というのはデトネーションゲーミングのピラメキ選手。「納得のいく結果ではなかったので、もう1年やりたいと専門学校に話したところ、プロの活動をするなら何年でも延ばしていいと言ってくれた」と協力的だったという。

 高校生となると事情は変わってくる。ゲームウィズのKK(ケーケー)選手はチーム内で唯一、日本に滞在しながら試合のたびに韓国に渡る生活を続けている。高校に通うためだ。「それを加味してもチームに必要な人材なので、マストで獲得した。チームとして卒業できるプランを立てている」とゼロス監督。「学校に行く時間が結構長いので、その分の練習量を深夜にカバーするのはしんどいです」と言いながらも期待通りの活躍をみせている。

 デトネーションゲーミングのレイヤ選手も高校生だが、「保護者や先生と相談して、シーズン中はプロとして活動し、それ以外は行ける範囲で全て学校に行けるよう頑張っている」と学校側の協力も得てチームの長期遠征に同行。「自分は他のゲームがうまくなくて、唯一輝けるゲームなので、ここまで来たら極めたい」と思いは強い。ゲームウィズのブロッサム選手は「親にプロに専念したいと相談し、OKをもらえた」と公立高校から通信制の高校に転校し、チームに合流している。

 一方、ファブゲーミングのジャック選手は地元の群馬県の会社に4月から就職予定で内定をもらっていたが、プロ選手にと誘われ、会社の人に相談したという。「いきなり新卒で入るより他のことをして入ってきた方が会社としてもいいから、そういうチャンスがあるなら行ってきな。待っているから」と背中を押してくれたという。

 不安はないかとの質問にピラメキ選手は「同年代は社会に出たり、大学2年生だったりするが、自分の活動は自分にしかできない、他の人にはできないもの。誇りを持っているので、焦りはない」と前を向いている。

 彼らは勝利という一つの目標に向けて、学業や生活を犠牲にして若さゆえの今しかない大切な凝縮した時間を過ごしている充実感にあふれていた。プレーオフ進出を決めているゲームウィズのROLAPORON(ロラポロン)選手は「プレーオフで勝てば中国の世界大会(7月18~21日に西安で行われるeスポーツ競技大会「World Cyber Games」)に出られるので、そこの優勝を目指して頑張りたい」と健闘を誓っている。【兵頭和行、平野啓輔】

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