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磯田道史・評 『世にも危険な医療の世界史』=リディア・ケイン、ネイト・ピーダーセン著、福井久美子・訳

 (文藝春秋・2376円)

 医学史に、いささかの不満がある。人類の医療の歩みをすすめた輝かしい成功の歴史だけで、埋め尽くされている感があるからだ。しかし、ほんとうの医療の歴史は、試行錯誤と失敗の歴史であった。とんでもない「インチキ療法」が、とめどなく開発される。悲しいことに、人はそれを信じる。「生きたい」と切に思うから、その人体実験に参加せざるを得なかった。そして、死体の山が築かれ、結果として、比較的、害が少なく、効果のある「療法」が発見されて、それが生き残り、今日の医学体系となっている。成功したものだけに着目してはいけない。なぜなら、医療の歩みは必ずといっていいほど、失敗をともない、被害者を生み出してしまう。医療過誤や薬害である。医学の目的は、人を救うことであるから、被害者を生み出す「医療失敗の歴史」をみすごしてはならない。

 本書は米国で出版された。原書タイトルは「QUACKERY: A Brief History of the Worst Ways to Cure Everything」。直訳すれば『インチキ療法-最悪全療法小史』である。しかし、医師と図書館司書の著者コンビは、膨大な文献にあたり、小史どころか訳題にあるような、危険医療の世界史を書き上げている。われわれが教科書で知っている世界史上の人物たちも、しばし…

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