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漆黒を照らす

大阪を拠点に国際報道に携わるフリージャーナリスト集団「アジアプレス」所属の石丸次郎さんと玉本英子さんの連載企画です。

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漆黒を照らす

/79 北朝鮮帰国事業から60年 苦難の記憶 風化させぬ /大阪

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乗船した1145人中73人は日本国籍者だった。「在日」の日本人配偶者と子供と思われる=故・梁永厚さん提供
乗船した1145人中73人は日本国籍者だった。「在日」の日本人配偶者と子供と思われる=故・梁永厚さん提供

 カメラの方角を、じっと見下ろす人たちを写した一枚の写真。笑顔もあるし、心配そうな表情の人もいる。詰め襟学生服の中高生、幼児の姿が目に付く。中央にある旗には「第56次 朝鮮民主主義人民共和国 大阪帰国者集団」とある。北朝鮮に帰国する在日朝鮮人が、船上で見送りに来た家族や知人との別れを惜しんでいる姿だ。撮影されたのは1961年4月28日。この日、1145人が2隻のソ連船に分乗して新潟港から北朝鮮に旅立った。

 写真を提供してくれたのは、大阪で朝鮮学校の教員をしていた故梁永厚(ヤンヨンフ)さん。教え子を見送りに新潟に行った。「帰国してしばらくすると手紙が途絶え、その後消息が全く分からなくなった子も多い。罪なことをしてしまったと思う」。一昨年に亡くなるまで、梁さんは教え子を北朝鮮に送り出したことを悔い続けていた。

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