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札幌の女児衰弱死 なぜ悲劇を防げないのか

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 また、幼い命を救えなかった。児童相談所には何度も住民から通告があった。5月に警察が母子と面会した際にも同行しなかった。

 札幌市の池田詩梨(ことり)ちゃん(2)が衰弱死し、母親と交際相手の男が逮捕された事件である。

 おむつを着けただけの姿で発見され、たばこを押し付けたようなやけどや複数のあざがあったという。

 東京都目黒区や千葉県野田市で女児が虐待死した事件を受け、児童虐待防止法改正案が国会で審議されているさなかである。

 なぜ児相や関係機関は子どもを救うことができないのだろうか。

 政府は児相の職員増を図っているが、激増する虐待に追いつかないのが現状だ。札幌児相は職員1人が百数十件の案件を抱えているという。警察に同行しなかったのも人手不足が理由という。後に、警察から同行しないよう要請されたと説明を変えたが、警察はそれを否定する。

 いずれにしても、今回は明らかに虐待リスクが高いケースだ。児相から率先して面会に同席すべきではないのか。児相には昨年9月と今年4月にも詩梨ちゃんに関する通告があり、4月の通告時には面会できなかったという。通告から48時間以内に子どもの安全を確認するルールが児相には課されているが、それも守られていなかった。

 緊急対応が必要な案件を見極められなければ、どれだけ職員を増やしても悲劇は繰り返されるだろう。

 母子と面会した警察は詩梨ちゃんの顔のあざや足の裏のばんそうこうを確認したが、虐待ではないと判断した。児相も警察から連絡を受け、同様の判断をした。

 相次ぐ虐待死を受け、児相と警察の連携強化が図られている。虐待防止法改正案でも児相への警察官の出向などが盛り込まれている。

 ところが、今回の事件は児相と警察が情報を共有する中で虐待死を防げなかった。中途半端な「連携」に致命的な問題が隠れている。

 警察は刑事罰に値するかどうかを基準に行動するが、児相は虐待の予防や親子関係の修復が目的だ。子どもを虐待から守るのは児相の責務である。そうした役割の違いをわきまえず、虐待の判断や責任を警察に委ねることは許されないだろう。

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