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余録

歌舞伎の「鞘当」で雲に稲妻の衣装は…

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 歌舞伎の「鞘当(さやあて)」で雲に稲妻の衣装は不破伴左衛門(ふわばんざえもん)、雨に濡(ぬ)れ燕(つばめ)は名古屋山三(なごやさんざ)。吉原で鞘が当たったと刀を抜き切り合う2人だったが、その切り結ぶ刀に赤い布をかぶせて割って入ったのは茶屋女のお福である▲「のけ」という両者に「いいや、のかれぬ、のかれませぬ。空も朧(おぼろ)に花の雲、その稲妻か濡れ燕、どちらにお怪我(けが)がごさんしても見てはおられぬこの場の仕儀」。看板役者の演じる2人の争いを止めに入る「留(と)め女」の名場面である▲この「鞘当」、江戸初演で不仲だった団十郎(だんじゅうろう)と菊五郎(きくごろう)を留め女役の岩井半四郎(いわいはんしろう)が仲裁した楽屋落ちでも話題になる。留め女、留め男のかっこよさを江戸っ子の心に焼き付けた舞台だったが、さてこちらの留め男の首尾はどうだったか▲対立を深める米国とイランの緊張緩和へむけた働きかけで注目された安倍晋三(あべ・しんぞう)首相のイラン訪問である。ロウハニ大統領に続き、きのうは最高指導者ハメネイ師と会談、改めて師の「核兵器製造の意図はない」との発言を引き出した▲しかし、首相訪問中にも米国はイランへの追加経済制裁を決め、かたやホルムズ海峡では武装勢力によるとみられる船舶への攻撃が発生するありさまである。仲裁の布をかぶせてもすぐにずたずたにされかねない刀の打ち合いである▲身内に強硬派のいる米国とイランだけに留め男にできることは乏しいが、自ら買って出たその意気や良しだ。今後の楽屋裏のやりとりも興味深く、国際社会も決して木戸銭(きどせん)は惜しまぬだろう仲介劇である。

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