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新潟県村上市で震度6強を記録した地震から一夜明けた19日、被害の全容が明らかになってきた。各地で住宅のブロック塀が倒れ、土砂崩れも発生。山形、新潟、宮城、石川各県でけが人が出た。山形県鶴岡市では小学校にある相撲場の屋根が落ちて崩れた。地震で停止した電車の乗客らは、津波注意報を受けて高台に避難した。避難所で朝を迎えた住民らは、小雨が降る中、その後の地震の不安を胸に自宅に戻り、散乱した食器などの後片付けに追われた。
震度6強を観測した新潟県村上市府屋の山北(さんぽく)総合体育館には、19日午前3時ごろまでに近隣住民ら約190人が集まり、不安げな表情で夜明けを待った。田中美子さん(58)は「大きな横揺れが3分ほど続いて本当に怖かった」と振り返った。「津波注意報が出て、着の身着のままで慌てて逃げてきた」と混乱ぶりを説明した。
自宅から2人の子供と一緒に避難した女性(40)は「ちょうど子供が寝たところで大きな揺れに襲われた。食器やテレビが倒れたが、また地震が来ると思いそのままにして避難してきた」と心配そうに話した。
同市勝木の福祉センターゆり花会館にも一時、約190人が避難した。漁業、本間喜昭さん(36)一家も同会館で一夜を過ごした。地震の激しい揺れに襲われて飛び起き、「何が何だか分からなかったが、必死に子供たちを守った」と恐怖を語った。
本間さんの父は漁船を沖合に停泊させて津波をやり過ごし、家族は近くの高台にある寺に避難。消防団に所属している本間さんは高齢者らを背負って寺に避難させ、19日午前0時すぎに家族を連れて同会館に移った。「夜はほとんど寝られなかった」といい、朝7時ごろ、避難物資のカレーを家族で食べて自宅に戻った。「津波で逃げるほどの地震は記憶にない。帰宅しても余震が続くのではという心配がある」と明かした。【北村秀徳、最上和喜】
18日夜の地震から一夜明けた19日朝、震度6強を観測した新潟県村上市や震度6弱だった山形県鶴岡市などを本社機「希望」から取材した。
村上市では、家屋の倒壊や道路の寸断などは見られず車の往来もあり、落ち着きを取り戻しているように見えた。日本海沿岸を北上すると、海に沿って走る羽越線の線路上2カ所で、7両編成の特急列車と、普通列車とみられる車両が止まっているのを確認できた。山あいでは、斜面が崩れて赤茶色の土がむき出しになっている箇所が所々にあり、崩れた土砂が道を覆っているところもあった。
鶴岡市の小岩川沿いにある集落では、瓦屋根がはがれ落ちて木肌がむき出しになった住宅が約10戸見られた。ほかにも同市内陸部では、JR鶴岡駅前で液状化のため車のタイヤが泥につかったり、市立大泉小学校の敷地内にある相撲場の屋根が崩れていたりしているのが確認できた。市教育委員会によると、相撲場は年数回開かれる大会や、その練習で使われるものの、日常的には使われていない。【二村祐士朗】
JR東日本新潟支社によると、地震の影響で18日午後10時半ごろ、JR羽越線今川(新潟県村上市)-越後寒川(同)間を走行していた新潟発酒田行きのいなほ13号(7両編成)が緊急停車した。津波注意報の発表を受け、停車位置が海に近いことから、乗務員が乗客51人をはしごを使って車両から降ろし、近くの高台に避難させた。
桑川(同)-今川間では新津発鼠ケ関(ねずがせき)行きの普通列車(3両編成)も緊急停車した。高校生2人が乗っていたもののけがはなく、約2時間後、JR東日本が手配したバスやタクシーで帰路についた。
国土交通省によると、このほかJR羽越線坂町駅(同)に停車中の普通列車の乗客14人が乗務員の誘導で高台に避難。午前1時ごろまでにJR東日本が手配したバスやタクシーで目的地に向かった。【北村秀徳、露木陽介、松本惇】
山形県鶴岡市大山の老舗酒造「渡会(わたらい)本店」では、保冷庫にあった出荷用の一升瓶などがケースごと倒れた。1000本以上が割れるなど大きな被害を受けたという。周囲には酒の香りが充満。観光客向けの展示ショーケースも倒れた。
日本酒は冬場に仕込み、現在は出荷時期。地震発生直後に自宅から駆け付けた渡会俊仁社長(55)は「ほとんど割れているが、これは仕方がないね。けが人がなくて良かった。タンクにひび割れがないので、それだけでも良かった」と話した。【長南里香】
原子力規制庁などによると、各地の原発に影響はなかった。
東京電力は地震直後に続き19日早朝にも現在停止中の柏崎刈羽原発(新潟県)を点検したが、問題はなかった。廃炉作業中の東電福島第1原発(福島県)や停止中の東北電力女川原発(宮城県)でも異常は確認されなかった。
北陸電力志賀原発(石川県)では、近くの沿岸部に津波注意報が一時出されたが、取水路の水位に変化はなかった。【奥山智己】
今回の地震は、地殻を東西に圧縮する力が働き、断層が上下方向にずれ動いた「逆断層型」の地震とみられる。気象庁や専門家は、今後約1週間は最大震度6強程度の大きな地震が発生する恐れがあると注意を呼びかけている。
専門家によると、「日本海東縁ひずみ集中帯」と呼ばれる地帯で発生。北米プレートとユーラシアプレートの境界付近のため、付近では地殻に東西方向から押す力が加わり、逆断層型の地震が起こりやすい。過去にも1964年の新潟地震や、83年の秋田県沖を震源とする日本海中部地震など津波を伴う地震が繰り返し発生してきた。
国土地理院(茨城県つくば市)は19日、今回の地震による地殻変動を観測したと発表。震源から約10キロ離れた新潟県村上市にある基準点が、北西方向に約5センチ移動していた。防災科学技術研究所によると、山形県鶴岡市の地震計で、揺れの勢いを表す加速度が強い揺れを示す653ガルを記録した。地震予知連絡会会長の山岡耕春(こうしゅん)・名古屋大教授は「1割くらいの確率でさらに大きな地震が起こる可能性もある」と指摘している。【池田知広、信田真由美】
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