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渡辺保・評 『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』=大島真寿美・著

 ◆『渦(うず) 妹背山(いもせやま)婦女(おんな)庭訓(ていきん) 魂結(たまむす)び』

 (文藝春秋・1998円)

人形浄瑠璃の芸のかたち、鮮明に

 江戸時代の大坂道頓堀は西日本一の歓楽街であった。歌舞伎、人形浄瑠璃、見世物の劇場が立ち並び芝居茶屋や商店が軒を連ねていた。

 そのド真ん中で事件が起きる。かしくという遊女が実の兄を殺して逮捕された。たちまち事件は歌舞伎、浄瑠璃になり連日劇場に大勢の観客が詰め掛け、大坂中の噂(うわさ)になった。そのなかでかしくは市中引(ひき)廻(まわ)しの上千日寺で獄門になった。そのまた刑場に群集が押し寄せる。劇場は虚構、事件は現実。しかしどこまでが虚構で、どこまでが現実か分からない。「ごちゃごちゃ」。そこに大きな幻想の「渦」ができる。その渦に巻き込まれた一人の少年がいた。すなわち本編の主人公近松半二である。

 半二は、儒学者穂積以貫の次男。父以貫が芝居好きのせいで少年の時からの芝居狂い。父の友人であった近松門左衛門を尊敬するあまり、親類でもないのに「近松」、その半人前だから「半二」。厳しいお袋からは「阿呆(あほ)ぼん」と呼ばれながらも道頓堀通いがやめられない。

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