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余録

江戸時代に「縄抜け」といえば…

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 江戸時代に「縄抜け」といえば、一度捕縛された者が役人の手から逃走することをいう。天明年間に江戸っ子の評判になり、後に芝居にまでされたのは鼠(ねずみ)小僧(こぞう)と並び称された盗賊、稲葉(いなば)小僧の縄抜けだった▲谷中で捕らえられて護送中、茶屋の厠(かわや)から不忍(しのばずの)池(いけ)に飛び込んで逃げ出し、行方をくらましたのである。後に上州で病死したとの話が伝わったが、この盗賊、大名や旗本の屋敷から刀や脇差しばかりを盗んだので義賊視する向きもある▲しかし稲葉小僧が武家を狙ったのは警戒が甘く、盗まれて恥になる刀剣の被害は隠されがちだったためらしい。悪事をなす者が取り締まる側の隙(すき)や甘さを巧みに突くのは当然のことで、備えを怠れば途方もない失態を招くことになる▲何やら江戸時代の大捕物を思わせる幕切れとなった神奈川県の小林誠(こばやし・まこと)容疑者の4日間の逃走劇だった。実刑確定に伴う身柄収容を拒んだ容疑者が行方をくらましていたこの間、県央地域は学校を休校にするなど住民は不安に包まれた▲「痛恨の極み」とは逃走を許した横浜地検の検事正の陳謝である。逃走公表が発生から3時間も遅れたのが、住民や自治体の怒りを買ったのである。さらにいぶかしいのは、実刑の確定から4カ月もたってこんな騒ぎになったことだ▲この事件で裁判所の保釈の適否も論議されているが、まずは検察が法執行の甘さをきちんと自己検証するのが先決である。まさか検察も自分らの手抜かりをもって「人質司法」を正当化するつもりはあるまい。

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