SUNDAY LIBRARY

岡崎 武志・評『百花』『プラスチック・フリー生活』ほか

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今週の新刊

◆『百花(ひゃっか)』川村元気・著(文藝春秋/税別1500円)

 「あなたは……誰なの? どうしてここにいるの?」と、子が母から告げられる日が来る。川村元気『百花(ひゃっか)』は、認知症に罹(かか)った母と息子の物語。

 レコード会社に勤める葛西泉は家を出て15年。身重の妻と暮らす。女手一つで育ててくれた母とは疎遠になっていた。ある日警察からの電話が。母が万引きで捕まったという。認知症が進行していた。泉は、子どもの頃、突然母が行方不明になったことを思い出す。

 生まれてくる子ども、仕事上のトラブル、目が離せない母。そんな中、泉は母との時間を取り戻す。母は今のことは忘れても、子ども時代の泉のことは克明に記憶していた。そして、自分を残して家を出た、母の隠された空白の1年のことが、次第に明らかになる。 2025年には5人に1人になると推計される認知症患者。病気になって、立場が逆転し、再び親子が寄り添う。そこで本当の親子になるとも言えるのだ。タイトルを投影した…

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