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6月 私のおすすめ 倉本さおり(書評家)

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(1)上田岳弘『キュー』(新潮社)

(2)島田雅彦『人類最年長』(文芸春秋)

(3)マーロン・ジェイムズ著、旦敬介訳『七つの殺人に関する簡潔な記録』(早川書房)

人の輪郭、あやふやに

 生の合理化。飽和する欲望。拡張されていく倫理--技術がめざましい発展を遂げる一方、「人間」の輪郭はどんどんあやふやになっていく。

 その、寂しさにも似た不安を「小説」のテクニックで象(かたど)った、実にロマンティックな傑作が(1)だ。戦争の記憶、謎の組織が暗躍するサスペンスフルな展開、そしてすべての人類がひとつに溶けあった「肉の海」が茫洋(ぼうよう)と横たわる七百年後の風景。巧みに視点が切り替わる語りの速度に乗せられるうち、過去と未来が美しい軌跡を描いて循環し、進化の行き着く果ての姿が「現在」というページ上に蜃気楼(しんきろ…

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