連載

余録

毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

連載一覧

余録

米国の国民的ニュースキャスター、W・クロンカイトは特番撮影で…

  • ブックマーク
  • メール
  • 印刷

 米国の国民的ニュースキャスター、W・クロンカイトは特番撮影で歌手のF・シナトラにずばり聞いた。「マフィアとの関係についてどう答えますか」。シナトラとマフィアの深い関係は公然の秘密だった▲「(取材は)これまでだ」とシナトラは席を立つ。今までもこの質問が出ると取材は打ち切られるのがならいであった。しばらく隣室で怒鳴る声が聞こえた後に、シナトラは友人でもあったクロンカイトの前に再び戻ってきて語った▲「出演するナイトクラブの経営者と会ったり、一緒に写真を撮ったりはするが、彼らとマフィアの関係など知る由(よし)もない。それを皆が信じるかどうかなど気にしない」。彼の貴重な“公式見解”だが、信じる人はほとんどいなかった▲客が詐欺集団だと知らなかったという芸人たちの釈明を信じないとは言わない。しかし、否定していた金銭の授受が判明したところでシナトラの弁明を思い出したのも仕方なかろう。吉本興業などの芸人らの闇営業と謹慎処分である▲過去には興行などにおいて暴力団など反社会的勢力に依存してきた芸能界である。今回は5年前の話だが、客が特殊詐欺の組織だというところに時代がうかがえる。闇世界へと仲間を引き込んだ仲介役の罪は深いといわねばならない▲テレビで名の売れていた芸人の責任も大きいが、所属事務所も闇営業の被害者顔をしていてはなるまい。組織を用いた闇の誘惑やワナから所属芸人を守る社会的責任も課せられている「お笑いの総合商社」だ。

あわせて読みたい

この記事の特集・連載
すべて見る

注目の特集