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余録

福沢諭吉は「民間経済録」で…

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 福沢諭吉(ふくざわ・ゆきち)は「民間経済録」で銀行についてこう説明した。「大丈夫と呼ばるる人物が発起して一社を設立し、あまねく世人の手にありて余るその金を一所に集めて以(もっ)て商工の便利を達す。之(これ)を銀行という」▲銀行には「才徳兼備」の支配人がいるから安心だともいう。諭吉は中央銀行の設立にかかわり、銀行制度の生みの親の一人ともされる。今や男子だけでなくなった「大丈夫」、そして「才徳兼備」が彼の銀行員に求めた理想であった▲その諭吉は大阪の適(てき)塾(じゅく)に学んだ若き日々、他の塾生とともに夏は丸裸で過ごしたという。ある時、呼び声に裸のまま2階から下りると師・緒方洪庵(おがた・こうあん)の妻女と出くわし、進退窮まった話を自伝に書いている。幕末スーパークールビズだ▲高温多湿の夏は多くの人々が半裸で過ごした昔だが、近代化は夏も冷涼な西欧の堅苦しい服装を日本人に強いることになった。とくに信用第一を旨とする銀行員は厳しく身なりを律したが、明治時代から温暖化の進む日本の夏である▲三井住友銀行が顧客と顔を合わせぬ本店勤務の行員について、夏の間はTシャツやジーパン、スニーカーなど軽装での勤務を認めるという。3メガバンクでは初の試みで、日本の銀行発足以来の職場の文化革命ということになるのか▲脱横並びの自由なアイデアや、異質なもの同士の出合いから生まれる新たな価値が貴重な今のビジネスである。令和日本の銀行の生き残りにかかわるかもしれぬスニーカー姿の男女の「大丈夫」「才徳兼備」だ。

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