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社説

「大崎事件」最高裁が棄却 再審の門が狭まらないか

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 鹿児島県大崎町で1979年に起きた「大崎事件」で、殺人罪などに問われ懲役10年が確定し、服役した92歳の原口アヤ子さんについて、最高裁が再審開始決定を取り消し、請求を棄却する決定を出した。

 地裁と高裁が続けて再審開始を決定していた事件である。こうしたケースで最高裁が再審を取り消すのは初めてとみられ、異例だ。

 被害者とされるのは原口さんの義弟だ。自転車事故を起こし自宅に運び込まれた後、自宅横の牛小屋から遺体が見つかった。

 原口さんは元夫ら親族3人と共謀し、義弟の首を絞めて窒息死させたとして起訴された。だが、一貫して無罪を主張してきた。

 今回の第3次再審請求審では、弁護側が提出した法医学鑑定書の信用性が主要な争点になった。

 鑑定は、遺体写真などを基に作成され、義弟が自転車事故による出血性ショックで亡くなった可能性を指摘した。高裁はこの鑑定を無罪とすべき新証拠としたが、最高裁は信用性に疑問を呈した。

 かつて再審は「開かずの扉」と言われていた。最高裁が75年の白鳥決定で、「新旧証拠を総合評価して、確定判決の認定に合理的な疑いを生じさせれば足りる」と緩やかな基準を示し、再審開始決定が相次いだ。

 今回の決定は、新証拠である鑑定の証明力の限界に重きを置いた判断だ。ただ、地高裁の決定を覆すだけの十分な説明はなされていない。

 事件では、事実上の無罪認定である再審開始決定が下級審で計3回も出ている。「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の原則に照らしても、結論には疑問が残る。

 事件の発生から40年がたち、最初に再審請求してから24年が経過した。時間がかかったのは、検察側の証拠開示が迅速に行われず、裁判所も検察に証拠開示させることに消極的だったからだ。高齢の原口さんへの配慮はうかがえなかった。

 今回の決定によって、再審の際、地高裁が従来より厳格に新証拠を評価するのではないかとの懸念が出ている。ハードルを上げすぎれば、DNA型鑑定のような決定的証拠がなければ再審が認められないことにつながりかねない。再審への門が狭くなる事態は避けたい。

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