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余録

その昔、朝鮮ニンジンを用いて…

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 その昔、朝鮮ニンジンを用いて人体の「気」を補う「独参湯(どくじんとう)」という薬があった。値の高い薬だが、急場をしのぐ切り札のたとえとされ、芝居の世界では不入りの時期に客足を取り戻す演目を指した▲ずばり「仮名手本(かなでほん)忠(ちゅう)臣蔵(しんぐら)」がそれで、ふつう「芝居の独参湯」といえばどんな時でもお客の入る忠臣蔵をいう。さて、こちらも他の出し物がピシッと決まらないところで、急きょ即席興行とあいなった米トランプ外交の独参湯である▲もちろん先日、板門(パンムン)店(ジョム)の南北軍事境界線上で対面したトランプ大統領と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)党委員長の会談のことだ。何しろ前日の朝にトランプ氏がツイッターで呼びかけ、金氏がそれに応えた前代未聞(ぜんだいみもん)のソーシャルメディア外交である▲その間会談までの調整の状況を逐一トランプ氏がツイートする劇場外交も驚きである。そして現代世界でもとりわけキャラの濃い2人が軍事境界線を往来しての握手やにこやかな歓談……興行的にはまさに文句ない「出し物」だった▲「人々に飽きられた時こそ、もっと宣伝すべきだ。そうすれば偶像(アイコン)になれる」はトランプ氏の言葉という。非核化交渉の再始動はめでたいが、3度くり返された華々しい首脳会談で実質的に決まった非核化の段取りはまだ何一つない▲来年の再選を狙うトランプ氏にも、経済制裁下の国内に不安を抱える金氏にも、権力の「気」を補い合う独参湯となったお互いの存在だ。非核化を心底求める身には、かえって心配な劇場外交の呼吸の合い方である。

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