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社説

韓国への輸出規制 通商国家の利益を損ねる

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 外交問題とは全く関係のない貿易手続きを持ち出して、政治の道具にする。日本が重視してきた自由貿易の原則をゆがめるものだ。

 政府が韓国に対し、半導体生産に不可欠な材料の輸出規制に踏み切った。元徴用工への賠償を日本企業に命じた韓国最高裁判決を巡り、韓国から満足のいく対策が示されなかったとして事実上の対抗措置に出た。

 スマートフォンやテレビに使われる半導体は韓国の主力産業だ。生産が低迷すると景気に打撃となる。

 元徴用工への賠償は、韓国も日韓請求権協定を踏まえ解決済みとしてきた。韓国は日本が提案した仲裁委員の任命に応じず、日韓の企業が慰謝料を拠出する案を示した。日本が受け入れられないのは当然だが、だからといって強引な手法に訴えていいわけではない。

 最大の問題は、日本が主張してきた「ルールに基づく自由貿易の推進」という理念に反することだ。

 政府は規制の理由を「韓国との信頼関係が損なわれたため安全保障の観点から判断した」と説明する。

 安保を根拠とした貿易制限は、世界貿易機関(WTO)の協定で認められてはいる。だが有事など極めて例外的との解釈が一般的だ。今回の規制は協定違反の疑いがあると指摘する専門家もいる。

 トランプ米政権も安保を理由に日本製鉄鋼に制裁関税を課した。中国も以前、尖閣諸島を巡る対立で希少資源レアアースの日本向け輸出を止めた。日本はその時は反対したにもかかわらず、今回同じように貿易を恣意(しい)的に政治利用しようとするのは理解に苦しむ。

 資源に乏しい日本は活発な貿易で発展してきた。ルールに基づく自由貿易は通商国家の生命線だ。

 先週の主要20カ国・地域(G20)首脳会議は、議長国の日本が主導して「自由で公正な貿易の実現」を宣言に明記した。これに逆行する輸出規制は国際社会の不信を招く。

 日本は規制拡大を検討している。韓国はWTOへの提訴も辞さない構えだ。報復の連鎖は日韓の対立を決定的にしかねない。

 安倍政権には、韓国に強硬姿勢で臨み保守層にアピールするという思惑はないか。目先の人気取りで長期的な国益を損なってはいけない。

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