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常態化する7月豪雨 レベル4での避難定着を

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 220人以上が犠牲になった西日本豪雨から1年というタイミングで、九州南部が記録的な大雨に見舞われた。土砂崩れで民家が倒壊するなどの被害も出ている。

 降り始めからの雨量が1000ミリを超えた地域もあり、引き続き土砂災害などの危険に備えなければならない。梅雨前線の影響で、雨は東海、関東甲信地方などにも広がっており、各地方で警戒が必要だ。

 住民が取るべき行動を危険度に応じて5段階で表した「警戒レベル」の運用が5月に始まってから初めての本格的な大雨だった。

 この仕組みができたのは西日本豪雨がきっかけだ。気象庁の警報、自治体の避難指示・勧告などの情報が住民の避難行動に結びつかなかった。その反省から、各情報が警戒レベルのどの段階に対応するかを分かりやすく整理した。

 命を守るためにポイントとなるのは、高齢者らが避難を始めるレベル3と全員避難が必要なレベル4だ。レベル5の発表時には既に災害が起きている可能性が高く、レベル5を待って逃げたのでは遅いからだ。

 今回、行政の対応は早かった。

 気象庁は2日続けて異例の緊急記者会見をし、レベル4での避難を強く促した。実際には発表に至らなかったが、レベル5相当の大雨特別警報を出す可能性にも言及した。

 鹿児島県では100万人以上にレベル4の避難指示が出された。三反園訓(みたぞのさとし)知事は大災害の発生に備え、自衛隊に災害派遣要請をした。要請のタイミングの妥当性については今後議論もあるだろう。

 同県で避難所に逃げた人はピークの頃でも避難指示・勧告の対象者の0・7%を下回った。ただ、住む場所や状況によっては、自宅の上階などへ逃げた方がいい場合もある。行政の呼びかけが正しい避難につながったかは検証しなければならない。

 今回、積乱雲が次々と発生し大雨をもたらす「線状降水帯」が確認された。西日本豪雨でも見られた現象だ。もはや「記録的豪雨」は毎年どこで起きてもおかしくない状況だ。

 レベル3や4で避難し、結果的に被害が及ばなくても「空振り」と思ってはならない。行政が早めに避難を呼びかけ、住民も応じる仕組みを定着させていく必要がある。

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