西日本豪雨1年

ハサミの音消さぬ 夫の死乗り越え 愛媛

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長男宙さん(左)の理髪店で働く兵頭千恵さん(中央)。なじみの客の散髪を終え、「また来てね」と笑顔を見せた=愛媛県西予市野村町地区で
長男宙さん(左)の理髪店で働く兵頭千恵さん(中央)。なじみの客の散髪を終え、「また来てね」と笑顔を見せた=愛媛県西予市野村町地区で

 ダムの緊急放流後に肱川(ひじかわ)が氾濫し、5人が死亡した愛媛県西予市野村町地区の理容師、兵頭千恵さん(65)は浸水で理髪店を兼ねた自宅が全壊し、1カ月後に夫幸治(こうじ)さんも病気で亡くした。「災害さえなければ今も生きていたはず」。今もそんな思いを抱えながら、前を向こうとハサミを握る。

 大柄な体にパーマをかけた髪、口ひげ、色つきのメガネ--。千恵さんが暮らす仮設住宅には若かりし日の幸治さんの写真が並ぶ。「こわもてだったけど、物静かで怒った姿は見たことがなかった」。幸治さんの父が開いた「兵頭理容室」を夫婦で継いで二十数年。閉店後、プロ野球のナイター中継を見ながら、千恵さんが幸治さんの髪にパーマをあてるのが、いつしか習慣になった。

 4年ほど前、幸治さんは目を患って引退。次第に体中が悪くなり、1年後には人工透析を始めた。寝たきりになり、80キロ近くあった体重は50キロに。千恵さんは1人で店を切り盛りし、懸命に介護した。

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