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社説

19年参院選 首相の政治姿勢 堂々たる論争が聞けない

 参院選の公示前日、日本記者クラブ主催の党首討論会で次のようなやり取りがあった。

 「森友学園、加計学園の問題はもう終わったという認識か」

 「私も妻も直接関わっていたという証拠は何一つなかった。しかし、その中で例えば公文書の改ざんがあった。行政府の長として大変申し訳ないと思っているし、再発は防止していかなければならない」

 安倍晋三首相は質問に正面から答えていない。首相の言う通り自分が直接関与していなかったとしても、両学園が優遇され、行政がゆがめられた疑惑は残る。

 そうした論点は避け、自己防衛を優先した。財務省による公文書改ざんも含め、行政のトップが真相を究明して国民に説明すべきなのに、その責任には背を向けたままだ。

かみ合わないやり取り

 首相は国会でも論点をすり替える場面が目立つ。そして、聞かれていないことを話し続け、質問と答弁がかみ合わないことがしばしばある。

 「悪夢のような民主党政権」

 首相がこう言って前政権を批判したのは2月の自民党大会だった。2日後の衆院予算委員会で立憲民主党会派の岡田克也前副総理が「政党政治において頭から相手を否定して議論が成り立つのか」と撤回を求めたのに対し、首相は「党総裁として言論の自由がある」と拒否した。

 異なる意見を尊重し合わなければ議論しても意味をなさない。岡田氏はその点を指摘したのだが、首相は言論の自由に論点をすり替えた。

 岡田氏がさらに「前の自民党政権時代の反省はないのか」と質問すると、首相は唐突に財政政策の解説を始め、岡田氏は「私が聞いていないことに延々と時間を使わないでもらいたい」と抗議した。

 首相が政権に返り咲いて6年半になる。第1次内閣からの通算ではこの秋に戦前の桂太郎首相を抜いて憲政史上最長となる。「安倍1強」といわれる盤石の政権基盤を築きながら、何か批判されると前政権を攻撃して優位性を示そうとする。

 首相の答弁姿勢を皮肉る「ご飯論法」という言葉が流行したのは昨年のことだ。「朝ご飯を食べたか」と尋ねられ「(パンは食べたけどコメの)ご飯は食べていない」と返すだけでは会話にならない。

 与野党の議論がまともに成り立たない国会の現状を象徴する場面が昨年の党首討論の際にあった。首相と立憲民主党の枝野幸男代表がともに党首討論について「歴史的使命は終わった」と述べたことである。

 国会の役割は、国民の間にある多様な意見や利害を国民の代表による議論で調整し、合意点を導き出すことにある。国民の側は国会の議論を通じて必要な情報を共有し、自分たちの代表に誰がふさわしいかを選挙で判断する材料とする。

 特に党首討論は政党間の政策論争を活性化させる狙いで導入された経緯があり、各党の目指す国家像を競う場として期待された。安倍政権下で開催回数が年々減る中、与野党の党首がその役割を放棄するかのような無責任な発言だった。

国会で合意形成努力を

 今年の通常国会では4月以降、首相の出席する予算委員会の開催を与党側が拒み続けた。参院選へ向けて各党が主張を明確に示し、論点を整理する場とすべきだった。

 煙たい野党がいる国会でなくても国民への説明はできると首相は考えているのかもしれない。選挙の前になると、首相に好意的なメディアを選んでインタビューに応じるのが安倍政権では恒例となっている。

 日本の政治が直面しているのは人口減少と少子高齢化という難題だ。東京一極集中を生んだ明治以来の国のかたちを変えるような国民的な議論が必要になる。

 老後資金の2000万円不足を指摘した金融庁の報告書を政府が受け取らなくても、将来不安は参院選の大きな争点になっている。

 不都合なことから国民の目をそらそうとすれば、議論から逃げる姿勢がかえって不信感を与えるのではないか。難題と正面から向き合う論戦が参院選で行われなければ、政治不信が広がりかねない。

 異論に耳を傾けることは、敵に弱みをみせることと同義ではない。相手を攻撃するだけが強さでもない。

 論点をかみ合わせ、幅広い合意形成を図る国会の機能を取り戻さなければならない。議論から逃げない強さを政治に期待したい。

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