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時代の風

各界の文化人が、それぞれの視点で混迷する時代を読み解きます。

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経済政策の効果検証 議論は客観的数字で=藻谷浩介・日本総合研究所主席研究員

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=宮間俊樹撮影
=宮間俊樹撮影

 当欄への寄稿を拝命してから3年、毎回飽きもせずに同じことを書いている。「皆の大合唱をうのみにしない方がいい。数字と現場から何が『事実』なのか論理的に判断しなくては」という話だ。しかし微力という以上に無力で、現実の日本には、思い込みの暴風が吹き荒れるばかりである。

 たとえば日本の国際競争力。前回の繰り返しだが、2018年の日本の輸出は81兆円と史上最高であり、経常収支黒字19兆円はドイツに次いで世界2位だった。いずれもバブル期の1989(平成元)年の2・2倍である。「日本株式会社」の売り上げや経常利益は、円高が進んだ平成の間に倍増したわけだ。しかし、その稼ぎは一部大企業や株主にため込まれるだけのようで、輸出企業の従業員を含めた大多数に好景気の実感は乏しい。つまり日本経済の問題は資金循環の不全(いわば循環器系障害)なのだが、皆が「日本は円高で世界から稼げなくなった(いわば摂取栄養不足だ)」と間違いを大合唱するもので、適正な治療が始まらない。

 金融資産の増加分が消費に回らない現象は、株式市場を見ても顕著だ。「異次元の金融緩和」に伴う資金流入に加え、日銀による買い支えもあり、日本の上場株式時価総額(日本取引所グループ発表の各月末数字の平均)は、12年の273兆円が18年には667兆円と、年率16・1%のハイペースで増えた。しかるに日本人の国内での個人消費(帰属家賃を除く家計最終消費支出の名目値)は、12年が234兆円で18年は247兆円…

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