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救済求め闘う孤児たち(その2止) 74年の苦しみ発信

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東京大空襲で家族を亡くし、ひとりぼっちになった体験を語る金田茉莉さん=埼玉県蕨市で2019年6月9日、小川昌宏撮影
東京大空襲で家族を亡くし、ひとりぼっちになった体験を語る金田茉莉さん=埼玉県蕨市で2019年6月9日、小川昌宏撮影

 

 ◆戦争孤児から聞き取り

「命あるうち記録を」

 埼玉県蕨(わらび)市の、静かな住宅街。6月、金田茉莉(まり)さん(84)は自宅の居間で、穏やかに迎えてくれた。子どものころの栄養失調のためか右目の視力を失い、長年酷使した左目も衰えている。私は、10年近く前から取材をしている。以前は裁判所や、空襲被害者の集会にも積極的に足を運んでいたが、最近は外出をなるべく控えているという。

 30年にわたり聞き取ったり、集めたりした資料と、虫眼鏡があった。活字を拡大して確認し、著述を続けている。「母たちと一緒に死んだ方がよかったと思っていました」。戦争孤児として生きた戦後を話し出すと、表情が引き締まった。

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