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川本三郎・評 『緋の河』=桜木紫乃・著

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 ◆『緋(ひ)の河(かわ)』

 (新潮社・2160円)

普通と違った男の子の成長物語

 意表を突く小説である。なにしろ主人公は女になりたくて仕方がない男の子。成長して念願叶(かな)いゲイバーで働く。ついには性転換手術まで決意する。

 決して奇をてらった小説ではない。むしろ普通とは違った男の子の、ごく普通の成長物語として力まずに書いているところに良さがある。LGBTが市民権を得てきた時代に出るべくして出た小説と言えようか。

 主人公の秀男は昭和十七年、釧路生まれ。父親は港湾の運輸会社の社員。当時としては中流の家庭だろう。秀男は子供の頃から誰にでも「可愛い」と言われて育った。自分でも可愛さに気づいている。男の子たちと外遊びをするより、二つ年上の姉と人形遊びをするほうが楽しい。自然と女言葉で話す。

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