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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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アニメーションの語源は、魂や生命を意味するラテン語アニマという…

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 アニメーションの語源は、魂や生命を意味するラテン語アニマという。そこから派生したのが「生命を吹き込む」という英動詞アニメート。二次元のキャラクターに生命が吹き込まれ動き出すアニメーションは、今や日本が世界に誇るポップカルチャーだ▲とはいえ、日本のアニメーションの元祖といわれる芸能はあまり知られていない。江戸で「写し絵」、上方で「錦影絵(にしきかげえ)」と呼ばれる。色絵が描かれたガラス板を幻灯機で映し、手で動かしながら調子よく語りをつける▲江戸時代から明治にかけて庶民の娯楽として親しまれた。当時、生命が宿ったように絵が動く芸は革新的だったに違いない。上方では落語の桂米朝一門が継承している▲2006年の公演時、日本美術の研究に熱心だった高畑勲監督が「日本ではアニメ・マンガ的なものが脈々と享受されてきたと考えてきたが、これもまた見事な証拠物件だ」と評したのが興味深い。彼もまた、新しい表現を追求した開拓者だった▲アニメーションに生命だけでなく、文明批評やリアリズムを吹き込んだ。オイルショックの翌年、1974年放送の「アルプスの少女ハイジ」は、経済発展と引き換えに失ったものを問いかける▲亡くなって1年あまり。東京国立近代美術館で「高畑勲展-日本のアニメーションに遺(のこ)したもの」が開催中だ。「火垂(ほた)るの墓」「かぐや姫の物語」など約1000点の資料で作品世界に迫る。平和とは、真の豊かさとは。込められたメッセージが聞こえてくる。

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