平成から令和へと天皇の代替わりがあって2カ月が過ぎた。今後も皇位を安定的に継承していくことは政治の重要課題だ。
今度の代替わりで、天皇陛下より若い皇位継承者は皇嗣の秋篠宮さまと長男悠仁さまの2人だけになった。このままでは天皇制の維持そのものが危うくなりかねない。
2017年6月に成立した退位特例法の付帯決議は、安定的な皇位継承などについて「退位後速やかに」検討するよう政府に求めた。
しかし皇位継承者の対象を広げるために、皇族の女性が皇位を継承する「女性天皇」や、男女を問わず母方が天皇の血筋につながる「女系天皇」を容認するかどうかを含め、自民党、公明党は考え方を示していない。これでは議論は深まらない。
安倍政権を支持する右派は天皇制の伝統にそぐわないとして女性・女系天皇に反対する。安倍晋三首相は3月の国会で「男系継承が古来例外なく維持されてきたことの重みなどを踏まえながら慎重かつ丁寧に検討を行う」と述べるにとどまった。
日本記者クラブ主催の党首討論会でも、女系天皇の賛否を挙手で示すよう求められると「私自身が今ここで答えるものではなく、党として決めていかなければならない」と強く反論し、明言を避けた。
立憲民主党は議論の論点として「女性・女系天皇への皇位継承資格拡大」を挙げている。国民民主党は女性天皇を認め、皇室典範改正にも踏み込んだ。共産党は女性・女系天皇を認める方針を示している。
共同通信の5月の世論調査では、女性天皇を容認する意見が約8割に上った。こうした状況の中、選挙戦で議論になるのを避けているのであれば、責任ある政権与党の取るべき姿勢とは言えまい。
皇室の公務を担う皇族の減少も深刻だ。女性皇族が結婚後も皇族として残るために、女性宮家を創設することの検討も喫緊の課題だ。
憲法1条は天皇の地位について「主権の存する国民の総意に基づく」と定めている。皇位継承者が先細りする天皇制の現状をどうするのか、各党は選挙戦を通じ、主権者である国民に考え方を説明すべきだ。
議論を先送りにする時間の余裕はもはやない。