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ユニバーサル野球体験会で、小薗陽広君(手前)のバットをセットする中村哲郎さん=東京都千代田区の毎日新聞東京本社で5月29日

誰でもプレーできるスタジアム

 まるで本物の野球場のように場内アナウンスやコンバットマーチが流れ、審判の判定やクリーンヒットに大歓声が沸いた――。年齢や性別、障がいの有無などに関係なく、誰にも野球を楽しんでもらう「ユニバーサル野球」の開発報告会と体験会が5月29日、東京都千代田区の毎日新聞東京本社であった。車いす利用者や家族、元プロ野球選手や球団職員、アマ野球やパラスポーツの関係者ら90人近くが集まり、希望者30人が実際にプレーした。

     ユニバーサル野球の仕組みは、市販の野球盤とほぼ同じ。指を1センチ動かせたらバットが振れる。本塁・中堅フェンス間は6メートルあり、野球盤(約60センチ)の10倍。一般的な野球場(120メートル)の20分の1に当たる。強化段ボール製でパズルのように組み立てる。開発した「堀江車輌電装」(東京都千代田区、堀江泰社長)は鉄道車両の整備・点検が本業だが、2015年から障がい者支援事業を始め、知的障がい者サッカーの支援などを続ける。

     開発のきっかけは、17年4月のスポーツレクリエーションで、ボランティアとして参加していた同社障がい者支援事業部の中村哲郎さん(51)が聞いた「僕も野球がしたい」との言葉だ。そう話した特別支援学校5年の小薗陽広(こぞの・はるひ)君(11)は脳性まひで、車いすを降りると自分では移動できない。10歳上の兄が小中学校で野球をしていて、家族で試合を見に行っていた。だから「中学の野球部に入り、盗塁したい」という夢がある。中村さんは、甲子園大会に春夏通算50回出場を誇る北海(北海道)野球部のOBで、自身はあと一歩で甲子園出場を逃していた。野球にあこがれる少年の夢をかなえたかった。

     中村さんは17年暮れ、ワンタッチで開く傘の機能を利用したバッティングマシンを作った。その後、ひもを引いて放すとスイングする仕組みにしたり、あらかじめバットをピンで留め、ピンを抜いたら振れるようにしたりするなど改良を重ねた。

     18年暮れには、中村さんに特別支援学校に通う子どもたちから「野球がやりたい」というビデオメッセージが届いた。中村さんは、これまでに工夫してきたものを組み合わせて野球盤に進化させ、今年3月に小薗君の通う学校で初の試合をした。改良を重ねて5月の体験会で使ったのは3代目球場だ。アルミ製の球を45秒間で1周する円盤に置いて「投球」し、打者は、タイミングを見計らってバットに付いたひもを引いてピンを抜いてスイングする。安打で走者が出ると、塁上のライトが付く。

     体験会参加者からは学校や企業の研修で使いたいとの声が相次いだ。中村さんは「カキーンという打球の金属音を出せるようにしたい。開発への協力をお願いしたい」と訴えた。

     参加者で、プレーに合わせて「ホームラン!」「アウト!」などとコールしたアジア野球連盟の小山克仁審判長は「場内アナウンスや、審判のコールがあると臨場感がある。誰もが同じ条件で、障がい者がプロ野球選手と同じフィールドで、同じチームで試合ができる」と評価した。また、小薗君は「野球ができてうれしい。自分が打てるのもうれしい」と語り、母妃路子さん(51)も「息子たちと一緒にスポーツする楽しさや応援する喜びを体験できる場になった」と話した。(毎日新聞社オリンピック・パラリンピック室委員、山口一朗)

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