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東京五輪招致疑惑や相次ぐ不祥事で失った日本スポーツ界の信頼を一刻も早く取り戻さねばならない。
日本オリンピック委員会(JOC)会長に山下泰裕・全日本柔道連盟会長が就任し、きのうの理事会で新体制が本格始動した。
五輪招致を巡る贈賄疑惑で、前任の竹田恒和氏は退任へと追い込まれた。五輪開幕まで1年余りという時点でJOCのかじ取りにあたることになった山下氏の責任は重い。
「金メダル30個」を掲げる東京五輪の成功は最優先事項だろう。しかし、それ以外にも課題は山積みだ。
招致疑惑に関して竹田氏は潔白を主張している。JOCの調査チームも違法性はないとの報告書をまとめた。しかし、調査にはJOC幹部などがオブザーバーとして入っており、弁護士らのグループからは「中立性を欠いた調査報告書」との厳しい指摘を受けている。
就任の記者会見で山下氏は、弁護士らのグループの指摘について「今後勉強していきたい」と話した。ならば、第三者による再検証に踏み切るべきではないか。
ガバナンス(組織統治)強化も不可欠である。
近年のレスリング界やボクシング界などの不祥事は、競技界内部の狭い世界で特定の人物に長期間、権限が集中し、組織の運営が不透明になったことが原因だ。
不祥事の再発を防ぐためにスポーツ庁は理事の任期制限や一定の割合以上の外部理事起用を求める規定を先月設けた。まず模範を示すべきは統括団体のJOCである。
山下体制では外部有識者が積極的に登用された。外部の意見を広く取り入れ、風通しの良い健全な体制を作ろうとの姿勢は納得がいく。
有識者には、山下氏を支えるだけでなく、時には厳しい意見を述べる役回りも期待したい。
気になるのは、JOC会長と全柔連会長の兼任である。競技団体に交付金を配分する側のJOCの会長職と、受け取る側の全柔連の会長職とを兼ねることには「利益相反」の声も上がる。
ここでも問われるのは透明性の確保である。開かれた組織に徹し、JOC改革を断行しなければ、信頼回復の道のりは険しいものとなる。