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頼れる大人がいない時どうする? 「生きる冒険地図」出版

「生きる冒険地図」で命の守り方を記したページ=学苑社提供

 家にご飯がない時、家族間で暴力が振るわれている時、学校で必要な物を用意できない時は、どうすればいいのか――。親が精神疾患を抱えているなどの事情で、身近に頼れる大人がいない子どもたちに向け、日々を生き抜くための知恵や工夫を伝える本「生きる冒険地図」(学苑(えん)社、1296円)が出版された。緊急時の対処法や、困った時に助けを求められる大人の見分け方など、具体的な方法を紹介している。【山寺香】

 精神疾患を抱える親を持つ子どもたちを支援するNPO法人「ぷるすあるは」(さいたま市)が製作した。こうした子どもたちが直面している困難は、日本ではあまり知られておらず、支援が届いていないという。

「生きる冒険地図」のイラストを描いた細尾ちあきさん=さいたま市内で2019年6月8日、山寺香撮影

 本には、子どもだけの力で何とか暮らしている2人の小中学生が登場。自分たちを助けてくれる道具や頼れる大人を捜す冒険に出るという設定で描かれる。文と絵を担当した看護師の細尾ちあきさんは、自身が複雑な家庭で育ち、試行錯誤しながら「生き延びるための工夫」を編み出してきた。本には、自らの体験で得た知恵も詰め込んだ。

 例えば、小学校は持ち物が多く、子どもが自力で用意するのは難しい。忘れ物をしてしまった時は「違うクラスに貸してくれる友達を見つける」、運動会の時は「体操服のゼッケンは木工用ボンドで張れば1日しのげる」など、実用的な方法を紹介する。「忘れ物が多いのもいろいろな理由がある。怒る前に理由を聞いて」と、教師ら周囲の大人に向けたメッセージも添えた。

学校行事や持ち物に関する工夫を紹介したページ=学苑社提供

 細尾さんは「家も学校もしんどいと、街をふらつくしかないことがある。そんな時は、危険を察知するアンテナも弱ってしまう」と話す。このため、「命を守る」と題したページでは、見知らぬ人の車に乗せられたり性被害に遭ったりしないための対処法や、信用してはいけない大人の特徴などを解説した。

 「子どもだけではどうにもならない時がある。そんな時には大人の力を借りてほしい」と細尾さん。「子どもたちが置かれた状況を理解するため、大人もぜひ手に取ってほしい。子どもが頼りやすい環境を作ってほしい」と話す。

親の症状に巻き込まれる子どもたち

 精神障害者の家族を研究する佛教大講師の田野中恭子さんによると、英国や豪州では子どもの4人に1人が精神疾患の親を持つという報告がある。日本国内のデータはないが、厚生労働省の患者調査(2017年)によると、うつ病や統合失調症、アルコール依存症など精神疾患の患者数は約419万人で、約30人に1人が罹患(りかん)している。田野中さんは、「未受診者を含めると患者数はさらに多いとみられるが、その子どもの状況はほとんど知られておらず、支援も届いていない」と話す。

 こうした子どもたちは、状況が十分に理解できないまま親の症状に巻き込まれ、不安や混乱の中に置かれる。親から日常の世話をされず衣食住に困ったり、周囲の助けもなく我慢を強いられたりするような困難を抱えていることが少なくない。

 田野中さんは「学校の先生など周囲の大人が実態を理解し、できるサポートをしつつ継続的な支援が受けられるよう相談機関につなげていく必要がある」と語る。

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