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晴レルデ

おもい-つくる/19 メイドイン大阪 世界に刻印

ニューヨーク・アートディレクターズクラブ賞でシマダタモツさんに贈られたゴールドキューブ=岩本浩伸さん撮影

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 ドイツ・ブラウン社で40年以上にわたって製品デザインを手掛けたディーター・ラムス氏をクローズアップした「純粋なる形象-ディーター・ラムスの時代」は2008年11月15日、大阪市のサントリーミュージアム[天保山]で無事、幕を開けた--。


     「お客さんが押し寄せるという展覧会ではなかったけれど、メディアの取材も多く、ある雑誌の副編集長は『これを見ないデザイナーはデザイナーと認めない』と書いてくれました」。学芸員の植木啓子さんは振り返る。玄人受けした展覧会だったのだ。

     大阪展のあと、09年5月~7月に東京・府中市美術館でも開催。4000部用意した図録は、東京展の途中で売り切れた。4000円台で販売された図録は、展覧会から10年を経たいま、古書店やネットでは2万円ほどの値が付いている。

     ラムス展はさらにロンドンやフランクフルト、ソウル、サンフランシスコでも開催。海外版の図録は、アートディレクターのシマダタモツさんが作ったものを英独語に差し替えた。

     シマダさんは、この図録とポスターで、世界的な広告デザイン賞である「ニューヨーク・アートディレクターズクラブ賞」のゴールド(金賞)を2部門で受賞した。当時44歳のシマダさんが、ニューヨークでの授賞式で名前を呼ばれた瞬間、感極まって号泣したというエピソードに、ちょっとコワモテの見かけと違って純な人柄が表れていると思う。

     授賞式には、印刷を請けたアサヒ精版印刷のマリさん(築山万里子さん)や写真家の奥脇孝一さんら関係者がこぞって出席した。最終的に図録は808ページになり「末広がりやと言うてたんですよ。そしたら、ホンマにそうなって、全員そろってニューヨークに行けるなんて」とマリさん。

     植木さんは「学芸員生活でラムス展に出合えたのは本当にラッキーだったと思います。悔いないですね、学芸員やめても」とまで言う。ちょっと言い過ぎかな。いま、建設が始まった大阪中之島美術館の準備を担っているのですから……。

     それはともかく、「メイドイン大阪のデザイン展が世界で認められたことが、何よりの功績」という植木さんの総括が面白い。「大阪にいる私が企画して、シマダさんがデザインして、奥脇さんが写真撮って、マリちゃんが印刷して。それが世界で評価されたら、大阪の創造力とか奥行きとかが評価されたってことでしょう」

     大阪から発信したラムス展が世界の玄人衆に認められた--。この事実は、それぞれの内なるよりどころになっているのだろう。

     ラムス氏も謝辞を寄せたが、植木さんが印象深い一番の褒め言葉は、実はラムス展の5年前にシマダさんと組んで図録を作った、フランスの建築家ジャン・ヌーベル氏からのものだという。図録を見て、ヌーベル氏はこう言った。

     「日本は自分の建築をわかっている」

     植木さんの補足。「ヌーベルの図録は、日本に先駆けてパリとマドリードで作られていて、それぞれデザインが異なっていた。ヌーベルは、比較してそう言ったんです。できれば日本じゃなく、大阪って言ってほしかったけど、まあしゃあない」

     そこまで言わせるシマダさんの仕事ぶりに、もう少し迫ってみたい。<文・松井宏員/写真・岩本浩伸/デザイン・シマダタモツ>

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