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都市対抗野球大会がきょう東京ドームで開幕する。会社、地域、支えてくれる人々のために全力で投げて打って走る選手の祭典である。
プロ野球より9年早く始まった大会は今年90回を数える。36チームの躍動感あふれるプレーが楽しみだ。
今年は、社会人野球を統括する日本野球連盟(JABA)の設立70周年でもある。大会と連盟の双方が節目を迎えるに当たり、社会人野球の歌「我街(われら)の誇り」が作られた。
うたわれているのは企業スポーツの理念だ。「働く汗、球を追う汗」「働く夢、ひとつのチーム」といった歌詞が、それを象徴する。
作詞した作家の伊集院静さんは、生まれ育った山口県防府市で社会人チームの練習をよく見学したという。都市対抗出場が決まると、街に垂れ幕が掛かり、出発する選手を地元の人たちが駅で見送ったそうだ。
プロと異なり、選手は仕事を抱えながら野球に励んでいる。職場や地域の理解とサポートが不可欠だ。一方、支援する側はひたむきなプレーに元気づけられている。
支え合う互いの気持ちが一体感を醸成し、企業の士気向上や地域の活性化につながってきた。社会人野球が愛される訳はそこにある。
今年初出場を果たしたのも街に根付く2チームである。
シティライト岡山(岡山市)は地元の中古車販売会社が母体だ。昨年の西日本豪雨の折、がれきやごみの撤去作業などを自発的に行った。
宮崎梅田学園(宮崎市)は選手も監督も自動車教習所の指導員として働く。野球を通じたコミュニケーション能力が指導員業務に役立つと、意欲的に仕事に取り組んでいる。
戦後最長の景気回復といわれるが社会人野球を巡る環境は依然厳しく、企業チーム数は最盛期の4割程度だ。ただ近年、企業数の比較的少ない地方での創設が相次ぎ、高校や大学卒業後も地元で野球を続けたい選手の受け皿になっている。
初出場の2チームも選手の思いに地元の企業家が動かされて2000年代半ばに誕生した。野球を支える動きの広がりを歓迎したい。
「我街の誇り」は「野球の旗へ、いざ集おう」という歌詞で締めくくられる。学生やプロと異なる醍醐味(だいごみ)を味わいに、ドームへ集おう。