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中村桂子・評 『チョムスキーと言語脳科学』=酒井邦嘉・著

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 (集英社インターナショナル新書・929円)

「文法装置」に注目し脳内を探る

 言葉ほどふしぎなものはなく、人間を知るには言葉を知らなければならないと言ってもよいように思うが、多様な言語の個別の研究はあっても共通性は見えて来ない。

 そこに、人間の脳には「言葉の秩序そのもの」があらかじめ組み込まれているとし、「普遍文法」という魅力的な考え方を出したのが、N・チョムスキーである。もっともその主張にはわかりにくいところがあり、「世界で最も誤解されている偉人」と著者は言う。筆者もその考えの理解が難しかった。「かった」と過去形にしたのは、著者による理路整然とした明快な解説(専門家から出されている批判までも含めて)で分かったように思えてきたからである。

 「人間は『言葉の秩序』を学習によって覚えるのではなく、誰もが生まれつき脳に『言葉の秩序』自体を備えている」。この言葉を支える基盤が三つあげられる。話され書かれた文の集積データ(コーパス)からパターンを抽出する方法で言語を解析せず、名詞・動詞などの特性を表す「素性」のはたらきに法則性を探すこと。なぜ子どもはこれまでに聞いたことのない文をつくれるようになるのかという「プラトンの問題」に答えること。文…

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