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視点・’19参院選 熟議の府? 「斎藤提案」に立ち返る時 論説委員・与良正男

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 戦後、連合国軍総司令部(GHQ)が日本に求めたのは貴族院を廃止して1院とする案だった。2院制が維持され参院ができたのは日本側の要請による。

 なぜ認められたか。二つの本会議場がある国会議事堂は焼かれず残っていたからだ--。

 30年近く前。後に参院議長となり、参院改革に取り組んだ自民党の斎藤十朗氏がこう語ったことがある。無論ジョークだ。だが、このままでは参院は建物以外に存在理由がなくなるという強い危機感があったと思う。

 「参院とは何か」はその後も続く大きなテーマである。

 衆参の与野党勢力がねじれた際には参院は「決められない政治」の要因に。ねじれが解消されると再び衆院のコピー。求められている「熟議の府」とは到底言えない状況のままだ。

 評価はともかく、「平成の政治改革」は小選挙区制の導入を中心に衆院を大きく変えた。手つかずだったのが参院だ。

 前回参院選では1票の格差を縮小するため選挙区の合区に踏み切ったが、自民党内にも不満が募り、今回は定数を増やす一方、合区であぶれた候補を救済する特定枠まで作った。いずれもその場しのぎに過ぎない。

 「斎藤提案」と呼んでいいだろう。実は参院改革の論点は斎藤議長時代の2000年に取りまとめた有識者による意見書にほとんど網羅されている。

 参院は衆院とは別の角度から多様な国民の意思を国会に反映させることに存在意義があると明記。行政監視を重視し、政府と距離を置くため参院議員の閣僚就任自粛も提案している。

 そして将来課題として「参院を地域代表的な性格のものにしてはどうか」と結ぶ。

 自民党は今、憲法改正4項目の一つに参院の合区解消と地方公共団体に関する条文の拡大を掲げているが、優先度は低い。

 なぜ衆参の役割分担を明確にするといった本質的な議論をしないのか。人口減少が続く中、参院を「地方代表の府」と憲法で位置づけ、同時に地方のあり方も再構築するのなら十分検討に値する案となるはずだ。

 国会再生のため今こそ「斎藤提案」を生かす時だ。00年意見書は参院のホームページに載っている。まず与野党全ての候補者に一読するようお勧めする。

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