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50年以上続く毎日新聞夕刊社会面掲載のコラム。編集局の副部長クラスが交代で執筆。記者個人の身近なテーマを取り上げます。

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中上健次の夏

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 8月に死去した和歌山県新宮市出身の作家、中上健次(1946~92年)には夏のイメージがある。故郷に創設した文化組織「熊野大学」の夏期セミナーが命日に合わせて8月上旬に開催され、ここ数年、毎年のように参加してきた。山と海、川に囲まれ、物語の舞台にもなったこの地で、全国から集まる参加者や講師らと中上文学について語らうのは夏恒例の至上の時だ。

 この夏は東京・新宿でも中上健次の世界に触れることができた。花園神社境内で椿組が上演する野外劇「芙蓉(ふよう)咲く路地のサーガ」(22日まで)。複数の代表長編を見事に一つの舞台にまとめ上げ、熊野の「路地」を新宿に出現させた。テントの隙間(すきま)からはビルや信号の明滅が見え、車のエンジン音が聞こえた。客席は肩が触れ合うほどの満員状態だった。

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