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社説

視点・’19参院選 政と官 「官邸官僚」が大手を振る 論説副委員長・前田浩智

 第2次安倍内閣以降、「首相官邸主導」は加速した。そこで錦の御旗(みはた)のように首相の意向を徹底させる武器として活用されたのが内閣人事局である。

     参院選公約で、立憲民主党は人事局について「見直す」と記し、共産党は「ただちに廃止」を訴える。国会が内閣の下請けと化し、強くなった官邸をチェックするものが見えない状況に陥っているからだ。

     内閣人事局は霞が関の審議官級以上約600人の人事を一元管理する。2014年に作られた。安倍晋三首相は「省庁の縦割り払拭(ふっしょく)」を強調した。

     平成の政治改革は官邸主導の確立をテーマに据えた。政策決定機能を内閣に一元化し、決定過程の透明度を高めるのが狙いだった。縦割りの各省と与党族議員が密室で重要決定を担った時代への反省である。

     その意味で、安倍内閣の取り組みは誤ってはいない。

     ただ、強力な人事権を誇示すれば、官僚は萎縮する。森友問題では財務省の公文書改ざん事件が起きた。「そんたく政治」は既に特殊な光景ではない。

     「総理の意向」を振りかざし首相官邸を足場に大手を振る「官邸官僚」が出現した。霞が関官僚を下僚扱いし、門外漢の特区でも外交でも「官邸方針」を押し通す。

     対露外交は象徴例だろう。ありえない譲歩を官邸官僚が主導し、外務官僚が渋々従ったと言われている。

     政と官の間合いを考える上で事例を一つ紹介したい。

     1985年のことだ。国会では年金改正がテーマだった。当時厚生省年金課長の山口剛彦元事務次官は蔵相だった竹下登氏から1枚の紙片を渡された。

     「故郷の母も年金でひっそりと暮らすことができている」。そこには年金官僚の苦労をねぎらう趣旨の文言が記されていた。山口氏は退官後、自宅にいるところを襲われ命を落としたが、晩年まで紙片を保管し竹下氏への感謝を口にした。

     竹下流の人心掌握術かもしれない。ただ、リスペクトにも似た官僚への配慮が感じられる。「政と官」の役割分担を踏まえたものだ。

     それを傍らに置いたまま官邸主導を強めるのなら、抑制の仕組みが新たに必要になる。

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