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科学の森

花火の美の秘密とは 夜空を彩る仕組みを考える

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 夏休みが始まり、全国各地で花火大会が開催される季節になった。夏の夜空を彩る打ち上げ花火には、美しく見せるための「科学」が詰め込まれている。幻想的な花火の色や光は、どんな仕組みで生み出されているのだろうか。【大場あい】

     ●4元素の炎色反応

     10号玉と呼ばれる、一般的な直径30センチの花火玉は、打ち上がると1500個の炎が同時に変化して、直径320メートルに広がる。この炎のもとが詰められているのが、花火玉の中に詰め込まれた「星」と呼ばれる小さな玉だ。

     「花火の仕組みは量子化学そのもの」と話すのは、産業技術総合研究所(茨城県つくば市)の松永猛裕(たけひろ)・上級主任研究員(火薬学)。量子化学は、原子核や電子の振る舞いなどに関する基本理論の量子力学を、化学的な現象や物の性質に応用した学問分野だ。

     「星」には、色や光を発生させる物質と、酸化剤や可燃剤などが絶妙な配合で収められている。酸化剤は外部から酸素を供給しなくても、色や光のもとを燃やし続けるための材料となる。

     花火の色は、金属を熱すると、種類に応じてそれぞれ特有の色の炎が出る「炎色反応」を応用したものだ。色のもととして実際に使われるのは、たった四つの元素だという。4元素と炎の色は、ナトリウム(黄)▽ストロンチウム(赤)▽銅(青緑)▽バリウム(黄緑)--だ。

     花火玉に火が付くと、これらの元素を含む化合物は2000度以上の高温に熱せられ特有の色を出す。松永さんは「価格や安全性などを考慮して4種類が選ばれ、4色をうまく混ぜて多様な色を作り出している」と話す。例えば「ストロンチウムの赤」と「銅の青緑」といった組み合わせにより、赤の光と青の光が混ざってできるピンクの光のような色を作り出すことができる。

     ●電子の振る舞い

     炎色反応はなぜ起こるのだろうか。ここに、電子の振る舞いが関係している。

     花火の内部で、着火によって熱が生じると、元素の原子核の周りを回っている電子は、エネルギーをもらって普段の軌道から飛び出し、エネルギーの高い軌道へ移る。冷めると、また元の軌道へ戻る。この元の軌道へ戻る時に、元素ごとに「化学発光」と呼ばれる特有の波長の光を出すのだ。それが人の目で見える波長の光(可視光)であれば「色」として見ることができる。花火に使われる4元素の他にも、だいだい色を出すカルシウムなどがある。

     「色は電子が飛び出すのに必要なエネルギー量によって決まり、元素特有の色以外は出ない」と松永さんは説明する。電子が飛び出してから元の軌道へ戻るまでの時間はわずか1億分の1秒以下だが、燃焼は持続しており熱が加わり続けるため、連続して光って見えるのだという。

     一方、色に加えて、花火を明るく鮮やかに見せてくれるのがキラキラとした光だ。これは熱くなった金属そのものが光を発する「熱放射」という現象を利用している。鉄を熱すると赤く光ったり、白熱電球のフィラメントが光ったりするのと同じ仕組みだ。

     「キラキラ」のために使われるのはアルミニウムやチタンなどの粉末で、燃え尽きるのではなく表面が燃えることで光っている場合が多い。金属が発する色は温度によって変わるが、花火の温度の場合は白っぽい光に見える。また、色の調合にも生かされ、色の多様性を生み出すのにも役立つ。

     ●キラキラ「銀点滅」

     日本の花火に関する記録は16~17世紀にさかのぼる。長い時間をかけて技術が蓄積されてきたが、最近注目を集めるのが、見た目が銀色の「銀点滅」と呼ばれる現象だ。

     松永さんによると、銀点滅とは「キラキラ」の素材としてマグネシウムを使い、さらに過塩素酸アンモニウムを酸化剤に使った時だけに見られる光の点滅のこと。熱を新たに加えるなどしなくても、マグネシウムの温度が上がったり下がったりして点滅するように見えるのだという。

     「特別な酸化剤との組み合わせで光がついたり消えたりするのが、なぜマグネシウムだけなのかはいまだに謎」と松永さんは言う。この現象は、花火の開発の過程で偶然発見された可能性が高いという。今後も花火師の試行錯誤から、現在では想像もできない花火や、科学的知見が生まれることも期待できそうだ。

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