メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

  • 政治プレミア
  • 経済プレミア
  • 医療プレミア
  • トクトクプレミア
点字毎日

特別対談 合理的配慮を見つめ直す/1 個別的支援こそ神髄

[PR]

 障害者差別解消法が見直しの時期を迎え、障害者政策委員会で議論されている。一方で、国連の障害者権利条約などでもうたう「合理的配慮」はその概念がまだ十分に浸透していない。権利条約に詳しい石川准・静岡県立大教授と、横断的な障害者運動に取り組む藤井克徳・日本障害者協議会代表が、合理的配慮をテーマに語り合った。【構成・山縣章子】

    実質的平等を保障

     --まず、合理的配慮が生まれた経緯を教えて下さい。

     石川 合理的配慮は実は米国の1990年ADA法(障害を持つアメリカ人法)の中心的な考え方で、実質的な平等を社会で実現するための重要な法的ツールだ。差別禁止は通常、不当な取り扱いや異なる扱いをする、参加を拒む、機会を与えないなどの行為をいう。一方、合理的配慮の不提供の禁止は、さらに踏み込んで実質的平等のための変更や調整を行わないことを差別とみなす考え方だ。障害者に対して、最低限これだけは行政や事業者がやらないといけないというもの。個別の調整を行いようやく機会の平等が実現され、同じ土俵で参加できるようになるという時に、行政や事業者は調整や変更が過度な負担でないのに拒むことを差別だと規定した。そして国連の障害者権利条約や日本の差別解消法に盛り込まれることになった。

     藤井 権利条約の中心に座る考え方の一つで、私はお重の箱、3段重ねをイメージする。1番下のお重は、誰もがあると助かるユニバーサルデザインと言ってもいい。駅で言えば、エレベーターやエスカレーター、スロープは、車椅子の人もベビーカーの人も石川さんや私も助かる。次に、ホームには点字ブロックが敷かれ、券売機に点字の説明や音声案内がある。それは視覚障害者共通の手助けになる、これが2段目。さらに、ホームに行った時、乗車口が分からないと駅員さんに支援を求める。この個別的な支援が3段目だ。この「個別的」こそが合理的配慮の神髄。

     権利条約から考えると、1段目や2段目が無い場合、3段目、すなわち合理的配慮で1段目も2段目もカバーせよ、となる。その場合はずいぶん深い重箱になる。個人に正面からスポットを当てたという点からも、合理的配慮の考え方は優れている。合理的配慮を明確に位置付けたことで、権利条約の価値が上がったように思う。問題は、この合理的配慮と政策をどう結び付けるかだ。国は、その実質化に向けて法制上の整備を急ぐ必要がある。差別解消法も、障害者雇用促進法の差別禁止条項もその一環だが、全体としてはこれからだ。

    条約浸透のバロメーター

     --障害者運動の現場からみると、どのような変化があったでしょうか?

     藤井 権利条約が2006年に国連総会で採択され、日本は14年に批准した。合理的配慮が障害分野でも条約の浸透のバロメーターになっている。ただ、石川さんがおっしゃったような正確な概念ではきちんと押さえられていない。企業や当事者団体にもまだ十分に理解されていないと感じる。障害者団体は学ぶことに加えて、社会に浸透させていく役割がある。

     ただ、影響は出てきている。国会にインクルーシブ雇用議連ができ、福祉と労働、福祉と雇用の一体展開が議論され、通勤支援がテーマに上がってきている。従来は経済活動に福祉サービスは使わないとしてきたが、それはお役所の論理で、視覚障害者には通勤に個別支援がいる。ここで合理的配慮の考え方を前面に出してはどうか。改正雇用促進法は成立したが、参議院の付帯決議で雇用と福祉の一体的展開をはじめ、通勤支援や障害の重い人のお昼やトイレの支援なども検討するよう盛り込んでいる。いろいろな分野で、障害団体側から合理的配慮の具体的なイメージを提案していくことが必要だ。ただ、社会の側が少し戸惑っている雰囲気がある。

     石川 合理的配慮はジレンマを抱えている。バリアフリー、ユニバーサルデザイン、アクセシビリティー(利用のしやすさ)が政策や制度で進んでいる分野と進んでいない分野がある。日本で言えば、移動円滑化法(高齢者障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律、バリアフリー新法)は相対的に進んでいる分野だ。そこでも合理的配慮が必要な場合があるが、環境整備が進んでいない分野よりは合理的配慮を求められるケースは比較的少ないといえるだろう。一方、環境そのものが整備されていないと、合理的配慮はより切実だ。さらに、環境整備が遅れる分野ほど社会的障壁が大きく立ちはだかっていて、求められる合理的配慮は質・量ともに高度化し、提供する側にとって過度な負担となりやすい。ジレンマと言ったのはそういうことだ。だから建設的な対話で「これだったらできる」という方法を、求める側と提供する側で一緒に考え、合意して進めていくしかない。対話を蓄積し、バリアフリーやユニバーサルデザイン、アクセシビリティーを促進する制度の構築をはじめ、施策の充実を進めていく必要がある。

     藤井 権利条約は、そのベースになる「一般原則」(第3条)の冒頭で、「固有の尊厳」を明言している。個別を大事にする合理的配慮を裏打ちするものである。合理的配慮は、活用すればするほど、障害者共通の一般支援策に転化する。そう考えれば、合理的配慮には、個別支援の視点と合わせて、障害関連政策の底上げを図る力も秘めている。

    おすすめ記事
    広告
    毎日新聞のアカウント
    ピックアップ
    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 「前の車が遅く、運転妨害された」あおり運転 容疑の男供述 茨城

    2. 「突然画像が表示されて」「自分は特定されているのか」エアドロップ痴漢 被害女性、パニックに

    3. 「何するんですか」容疑者逮捕に抵抗 あおり運転 逮捕の女も叫び騒然

    4. 東名あおり事故初公判 死亡夫婦の次女の供述「パパとママが死んでしまいました」

    5. 陸自試験で集団カンニング、45人停職 教官漏えい、写真撮りスマホで同僚に拡散

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    今週のおすすめ
    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです