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平将門の弟? 絵発見 祠に描かれた平安武人の正体を探る

諏訪神社本殿の西面の板壁に描かれている絵。平将平を模したとみられるという=小鹿野町藤倉で=2019年5月20日11時10分、松山彦蔵撮影

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 埼玉県小鹿野町の群馬県境に近い山間の藤倉地区で、小さな祠(ほこら)の板壁に平安時代の武人のような人物を描いた絵が見つかった。平安中期に関東で「将門の乱」(938~940年)を起こし朝廷に背いた武将、平将門一族の伝説に詳しい歴史研究家の染谷洌(きよし)さん(81)=草加市=は「この絵は将門の弟、平将平を模しているのではないか」と推測する。この地に絵が残された謎を探った。

 祠は小屋(間口と奥行き各約3メートル)内に保存されていた諏訪神社本殿。間口64センチ、奥行き57センチ、高さ195センチと小さめだ。同地区の新井、黒沢、花坂の3家が代々氏神としてまつり、新井家の当主、富士男さん(59)が3年前、傾いた本殿を修理しようとして西面の板壁に描かれた絵を発見した。

平将門・将平の略系図

 絵は頭に冠を載せた男が刀を差して牛に乗り、こちら側に尻を向けている。この人物を染谷さんが将門の弟と見る論拠は何か。

 まずは平安貴族的な衣冠姿と、さやが赤く塗られた刀。刀身が反り、平安期に登場した「湾刀」と指摘する。鎌倉期以降の武士とは明らかに違い、「軍事貴族」などと呼ばれる平安期の武人とみられる。

 次に、染谷さんは史料「将門記」と数多い将門一族の伝記を挙げる。「将門記」は、将門が関東八州の独立を唱えて新皇(新しい天皇)を宣言した際、将平が兄をいさめ、乱が将門の戦死で終わると、一族への追討は情け容赦がなかったと記す。秩父地方に残る文献や言い伝えは将門の残党や将平の親族、従者らが秩父の山奥深く逃げ込み、さまよったことを伝えるという。

 染谷さんは「将平が史料に出てくるのは(兄をいさめた)1カ所だけ。伝説伝承に将平の容姿をうかがわせるものはない」としつつ、絵に描かれた牛に注目する。将平は菅原道真(845~903年)の三男景行に学問を師事した文人であるとし、「牛は『学問の神様』の道真の使いで、菅原家との縁を示唆する。絵の主も色白で面長のうりざね顔で文人の面ざしがある」と語る。

 さらに、皆野町の日野沢大神社(旧大山大神社)で神像とされる「白馬に乗った将門」木像のように、将門の騎馬像は各地に伝わるが、牛にまたがる姿は見当たらないという。

皆野町の日野沢大神社に神像と伝わる「白馬に乗った将門」木像=県神社庁提供

 また、武人の腰の辺りには白い布が付いているが、染谷さんは「それは絹で、牧(馬の牧場)や鉄と並んで将門の経済基盤を支えたものだ」とし、ここでも将門との結びつきがみられると説く。

 では、この絵はいつ描かれたのか。新井さんは「3家には諏訪神社に関する言い伝えや文書は残っていない。ただ、父からは『うちは桓武平氏の血筋』と系譜をほのめかされたことがある」と言う。本殿内部には工事の由来や年月などを記した棟札7枚が残り、最も古い江戸時代の文化8(1811)年の棟札は「修復」と書かれている。それ以前から諏訪神社がまつられていたと分かるが、絵の制作年代を推定する材料は見つかっていない。

 本殿には随所に竜や亀、鳥、梅など動植物の彫刻と絵が施されている。染谷さんは、江戸時代後期に流行した、謎かけの絵や彫刻で真意を伝える「判じ物」の技法によって「将平の流れをくむ落人が土着した隠れ里として将平への追慕を表している」と総括した。【松山彦蔵】

平将門

 桓武天皇から5代目の子孫。祖父の高望王が平姓を賜り上総国(現千葉県の一部)長官に赴任して坂東平氏が始まる。将門は下総国北部(現茨城県西部)に本拠を置いたが、領地争いなどから伯父の良兼、国香らと対立。関東8カ国を支配下に治め新皇を名乗った。朝廷からは逆臣と見なされ、940年、国香の子貞盛と下野国(現栃木県)の豪族、藤原秀郷に討たれる。京都でさらされた首が胴体を求め東国に飛び去ったなどとする多くの伝説が全国に広まった。

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