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内田麻理香・評 『「二つの文化」論争 戦後英国の科学・文学・文化政策』=ガイ・オルトラーノ著、増田珠子・訳

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 (みすず書房・6696円)

普遍性持つ「文系/理系」論争

 文系と理系にまつわる議論は、いつでも人気を博す。その「文系/理系」論を語る際、頻繁に引き合いに出されるのが、C・P・スノーの「二つの文化」である。科学者出身で小説家としても成功したスノーは、一九五九年に「二つの文化」と題された講演で、科学者と文学的知識人との間の知識の断絶を指摘した。その講演は好意的な反響も得たが、その一方で苛烈な反発も受けた。その代表的な論敵となったのが、F・R・リーヴィスである。本書は、スノーとリーヴィスの激しい論争は、単なる学問上の諍(いさか)いではなく、異なるヴィジョンを持つ者たちのイデオロギー上の衝突として見直す。さらに、両者のイデオロギーの詳細をみることで、英国の一九六〇年代の文化政策を広い射程でとらえる。

 スノーが「二つの文化」の議論で試みたのは、当時の英国の階級社会では地位が低かった科学の分野を称揚し、文化として認めさせることだった。科学の価値を主張するために、スノーは科学者らの思想は高級で、道徳的な生活を送っているとまで述べ、科学者の対極にある文学的知識人をラッダイトと呼んで非難した。これに反発した一人が、ケンブリッジ大学の英文学者であるリーヴィスである。

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