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今週の本棚

鴻巣友季子・評 『夏物語』=川上未映子・著

 (文藝春秋・1944円)

生の“つくられ方”への戸惑い

 妊娠することを「おめでた」と言う。新しい命の息吹きを寿(ことほ)ぐ言葉だ。しかしその寿ぎはだれに向けられたものだろう? 当の本人(胎児)にむかって「おめでとう!」と言う人を、あまり見たことがない。胎内の当人の意思はそっちのけと言ってもいい。

 人は一方的に生まれさせられる。「産んでくれと頼んだ覚えはない」という、親への反抗の決まり文句があるが、実際に最近、インドでそのような裁判があった。当人の同意なく産んだことで、子が親を訴えたのだ。日本では、先々週から「存在のない子供たち」というレバノン映画が公開されている。過酷な毎日を生きるスラムの少年が、「僕を産んだ罪」として両親を告訴する内容だ。

 いま日本でも、重い負担を背負わされた若い人たちの間で、「反出生主義」が現実問題としても議論されてい…

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