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記者の目

百舌鳥・古市古墳群の名称 考古学の積み重ね生かせ=矢追健介(大阪社会部)

森浩一さんが作成して学生に配布した陵墓の考古学的な名称案=森さんの教え子の今尾文昭さん所蔵

 大阪府の百舌鳥(もず)・古市(ふるいち)古墳群(堺市、羽曳野(はびきの)・藤井寺市)が世界遺産に登録されることが決まった。しかし、古墳群を構成する4~5世紀の古墳計49基のうち、宮内庁が天皇や皇族の墓として管理する陵墓8基が、教科書とは異なる「○○天皇陵古墳」といった名前で申請されたことは今後に課題を残したと思う。考古学の蓄積に基づき、地名にちなんだ名称を尊重することが、長い目で見て遺産の保護や観光振興に生きるはずだからだ。今後は教科書同様、地名に基づいた名称に統一するか、せめて両方の名称を併記すべきだと考える。

 政府の申請では国内最大の前方後円墳「大山(だいせん)古墳」は「仁徳天皇陵古墳」、「百舌鳥陵山(みささぎやま)古墳」は「履中天皇陵古墳」などと記載された。陵墓の指定の多くは幕末から明治時代に決められたが、根拠になった古い文献や伝承が本当に正しいか学術的に分からないし、築造年代が天皇の即位順と合わない古墳もあるのだ。そもそも「天皇」称号が使われ始めたのは7世紀の飛鳥時代とされる。中国の史書「宋書」は、5世紀の倭(当時の日本)には歴代5人の「王」がいて交流があったと記し、考古学者も当時の権力者を「大王」などと呼んでいる。

 考古学者は調査や研究を重ね、古墳の名称を決めてきた。かつて教科書に「仁徳陵」などと記載されていた古墳は、現在「大山古墳」と呼ばれる。地名を基にした遺跡の命名は考古学の基本だが、陵墓にも適用するのが標準化した背景には、同志社大の名誉教授で著名な考古学者、故森浩一さんの取り組みがあった。

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