言葉が富次郎の喉元まで出てきて、つっかえた。
「かまわないんですか。厄介なことになるかもしれないのに」
「百物語を聞くのも、充分に厄介なことを引き寄せる趣味だと存じますが」
今度は、富次郎は口を開けることもできなかった。息を呑(の)んで店主を見つめる。
「先にお会いした際には、私はお客様のお顔を存じませんでした。あとで、斜(はす)向かいの瀬戸物屋が教えてくれたんです」
あれは変わり百物語で評判の袋物屋、三島屋の若旦那だよ、と。
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