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日本文化をハザマで考える

第9回 日本の地方都市は、直接その独特な文化を世界に発信したい

支倉常長 (画家:クロード・デルエ)

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 最近仙台に行った時、私はこの都市が、いかにさまざまな文学的な繋(つな)がりを持っているか、ということを改めて知った。たとえば、中国人作家、魯迅は20世紀初頭、医学生として仙台に住んでいた。

 支倉常長率いる侍と商人の一行が1613年、西洋に向けて出発したのも仙台藩からだったと思い出した。一行はまずメキシコに行き、そこから大西洋を横断してヨーロッパに到着し、スペインを旅してローマ法王に謁見した。旅をしている間に、ほとんどの者はキリスト教に帰依したが、1620年に日本に帰ると、キリスト教に対する幕府の対応が変わっていた。キリスト教は徹底的に弾圧され、信者は強制的に背信することを余儀なくされていたのだ。

 これらの事は1980年に出版された、遠藤周作の「侍」のテーマだった。遠藤の創作意欲をかきたてた、日本の「キリスト教の世紀」の終わりを告げる際の悲劇の一つと、私は思っていたものだ。

 しかしながら、先日、劇場プロデューサーの広瀬純氏と時間を過ごしたことで、この話に対する解釈が変わった。広瀬さんは、1613年の仙台藩による慶長使節団は三陸地震のほんの2年後に派遣されたことを教えてくれた。三陸地震は津波も合わせてこの地方に多大な被害を及ぼした。その甚大な被害にもかかわらず、一行は500トンの船で出発している。この船こそ仙台の復興と、外の世界と繋がりたいという野望のシンボルだった。

 江戸の将軍、徳川家康がウィリアム・アダムス(三浦按針)に作らせた船は120トンであった。これと比べても、慶長使節団派遣は仙台の無類の誇りと野望を直接表すものであったと言える。

 広瀬さんは、2011年の東日本大震災と福島第1原子力発電所事故の後、この侍の話を基にしたミュージカルを東北の人たちを鼓舞するために上演したと言った。東北の人々は以前にもこのような目に遭ったが、打たれ強さと強い決意を持って乗り越えてきた事を思い起こしてもらうために。

 仙台のような街を、東京の権力に従する単なる日本の地方都市だと思ってしまいがちだが、仙台は――他の日本の地方都市と同じように――誇り高い自分たち自身の文化と歴史を持っているのだ。そして彼らは、首都東京からの干渉なしに、直接その文化を世界に発信したいと願っているのだ。

 同じことは、何かと言うと2次的な役割を担わされてしまう世界の他の地方都市にも言えるだろう。イギリスの地方都市、マンチェスターに住んでいる私としてはいつも、ロンドンの優位性にうんざりさせられているので、仙台のように独立心を持つことには、全く同感である。

 1613年の慶長使節団派遣は、我々すべてを鼓舞するものである。人はどこの出身であろうと、直接世界へとはばたくことができる。そしてその野望は、世界の名だたる都市で人々が夢見る野望よりも、はるかに大きいかもしれない。それが、あの使節団派遣から学ぶべき、真のメッセージであるのだろう。

@DamianFlanagan

ダミアン・フラナガン

ダミアン・フラナガン(Damian Flanagan) 1969年英国生まれ。作家・評論家。ケンブリッジ大在学中の89~90年、東京と京都に留学。93~99年に神戸大で研究活動。日本文学の修士課程、博士課程を経て、2000年に博士号取得。現在、兵庫県西宮市とマンチェスターに住まいを持って著作活動している。著書に「世界文学のスーパースター夏目漱石」。

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