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エンタメノート

林家たま平さん「ワンサイドゲームだった」花園の夢 ラグビーとドラマと人情噺

林家たま平さん=東京都台東区で2019年7月26日、油井雅和撮影

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 日本開催のW杯まであと50日を切り、なにかと気になるのがラグビー。TBS系の日曜劇場「ノーサイド・ゲーム」(午後9時)は、池井戸潤さん原作で、主演は大泉洋さん。そして舞台は社会人ラグビーチーム「アストロズ」だ。選手の佐々一役で出演している林家たま平さん(25)に聞いた。【油井雅和】

野球部に入ったはずが…

 東京・神宮外苑の秩父宮ラグビー場は、ラガーマンの聖地。たま平さんは先日、ロケで高校時代以来の秩父宮のグラウンドに立った。「僕の引退した秩父宮に、まさかもう一度立つことができるとは。ただ、走り込みとかはもうやりたくないですけど」

 明大中野中に入学し、野球部に入りたかった。「地元のチームに誘われていたけれど、受験勉強でできなかったから」。野球部は人気の部で、申し込みの長い列ができていた。「もう一つ、窓口を作ったよ」と言われ、入部届を出した。

 翌日、ホームルームで担任がこう話した。「このクラスにラグビー部に入る勇気あるものがいる、海老名(本名・海老名泰良)、よくやった」

 誤ってラグビー部の窓口に入部届を出してしまった。「えーっ?でしたよ。担任の先生、ラグビー好きだったから、うれしくてわざわざホームルームで言ったんでしょうね。でも、『入るわけねえじゃん』と。そうしたら幼稚園からずっと一緒の友人が『面白そうだから行ってみようよ、ダメなら野球部行けばいいし』って」

 そこで、ラグビーの面白さに気づき、ハマってしまった。落語をやろうなんて思いは、当時は全くなかった。

 中学3年の時、東日本大会の決勝で強豪の茗渓学園と対戦。「オレのせいで、タックルミスで、ワントライ差で負けちゃったんです。それで、ラグビーやめようと」

 ラグビーをやめたら何をしたらいいのか。「その時に寄席に行ったんです。そこで落語家になりたいと思い、一度、父親に言ったんです。そうしたら、高校もラグビーを一生懸命やれと」

 父親は林家正蔵さん。祖父は初代林家三平さん、曽祖父は7代目の林家正蔵さんと、海老名家は、歌舞伎とは異なり世襲ではない落語界では、珍しい3代続く落語家の家だ。

 高校に進んでも、ラグビーを続けた。そして東京都の高校ラグビー予選の決勝、こちらも対戦相手は強豪の国学院久我山。秩父宮だった。

 「ワンサイドゲームでした。51対14。もうメタメタやられました」

前座時代を思い出し

 そのまま明治大に進学して、ラグビーを続ける道もあっただろう。でも、「ラグビーは二度とやらないんだろうなと思った。もう未練はないと思って完全に離別して落語の道に入りました」。

 2013年、なかなか弟子入りを認めてくれなかった正蔵さんも、弟子入りを許し、親子は師匠、弟子の関係になった。17年には二ツ目に昇進した。

 二ツ目に昇進すると、前座修業から解放される一方で、自分で仕事を取り、自分で落語会を開き、真打ち昇進に向けて芸を向上させなければいけない。落語以外の仕事をして、芸域を広げることも大切だ。

 TBSでたまたま、たま平さんのプロフィルを見た関係者が、ラグビーの経験があることに気が付いた。ドラマのオーディションを受けるよう言われ、セリフやラグビーのパスの実演などを披露すると、翌日、「スクラムハーフをやれるか」と連絡が来た。学生時代は、フォワードをやっていた。スクラムを組む、体の大きい人がやるポジション。スクラムハーフは背番号9。体の小さい選手で、小回りの利く、パスを出す役割だ。

 「やります」と答え、ジムに通ったり明大中野の練習に参加したりして、一から体を鍛え直した。

 「噺(はなし)家生活で、なんとなく体がだらしなくなっていたので。この仕事が決まってすごくうれしかった。心のどこかで、またラグビーができると喜ぶ自分がいました」。ベンチプレスも最初は80キロだったのが、今では130キロが上がるようになった。

 ドラマの「アストロズ」メンバーのうち、俳優は、キャプテンの岸和田徹を演じる高橋光臣さん、元ラグビー選手で7人制ラグビー日本代表だった本波寛人役の天野義久さんぐらい。あとはほとんど演技経験のない人ばかり。そして、ドラマの監督は、ヒット作を連発している「ジャイさん」(「ドラえもん」のジャイアンに似ているから)こと福澤克雄さん。慶応大ラグビー部(體育會蹴球部)時代は上田昭夫監督のもと、初の日本一に輝いた。大柄の名ディレクターだ。

 「ジャイさんは『心で感じろ』っていうんですよね、細かくは言わない」。そして、「第1回の大泉洋さんの長ゼリフに、素で感動しちゃったんです。それがみんな決意の顔になって。役を作らなくても、そのまんま受け止めて、そのまま出したって感じでした」。

 佐々一という役については、「こいつ普段からいじめられてるけど可愛げのあるやつだな、というのが、まんま、僕なんで。自分の意見もそんなに言わないで、でもみんなのために必死で動いて、変なプレッシャーくらって、ミスしちゃうとか、仕事もそんなできるわけでもないし。楽屋で働いている前座時代の僕を思い出しました」。

「泣く時は優しさに触れたとき」

 演技の経験は、「男はつらいよ」の山田洋次監督が脚本・演出を手がけた音楽劇「マリウス」に出演した程度。「芝居に関しては、育ての親は山田監督です。監督はよく『反射しろ』という言葉を使われるんです。『素のままでいいんだよ。演技してても何もよくないから。ほんのちょっと反射を付け加えればいいんだよ』と。うれしかったですね」

 大泉さんからも声をかけられた。「僕ら撮影開始の時、ラグビーの試合前のように円陣組むんですよ。最初は入っていなかった大泉さんも、それ、楽しそうだから僕もと、入ってきてくれて。ひとりひとりのラグビー選手の指導もしてくれるんです。私には、顔を作るな、と。心から通して出た顔をやればいいんだよ、それが自然なんだよと。山田監督と一緒でした」

 ラグビーと落語、どちらが大変かと聞くと、「体鍛える方が楽ですよ、何も考えないで音楽聞きながら。落語の稽古(けいこ)の方が圧倒的に大変です」。そして、「いい意味で僕の落語も変わっていくかもしれない。撮影していて、すごく人情噺をやりたいと。うちの師匠の『ねずみ』とか、やりたくなってきました。好きな言葉があるんです。人が本当に泣く時は人の優しさに触れたときだ。蛭子能収さんの言葉なんですけど。ドラマの第1回で大泉さんが本音をぶつけた時、ポロポロって自然に涙が出たんです。その時です。人情噺やりたいって。人の優しさに触れる噺、やりたいですね」。

 最後に、内緒話を一つ。

 「うちの(正蔵)師匠、第1話を見ながら号泣してたらしいです。師匠が一番前で見ていて、大おかみ(祖母の海老名香葉子さん)が、全然テレビの画面見られなかったって。まだ第1話、泣くところじゃないのに」。うれしかったことだろう。4日放送の第4話では、たま平さんの登場シーンも多いらしい。

 「日曜劇場を見て、明日から頑張ろうって思ってもらえるといいですね。あっ、あと(叔父の林家三平さんが出ている)笑点も見てください」

 弟子はドラマの撮影で、師匠は寄席のかけ持ちで、熱くて忙しい夏を過ごしている。

油井雅和

東京生まれ。東京、大阪で、大衆芸能、笑芸、放送などを取材し、芸術選奨選考審査員、文化庁芸術祭審査委員などを務めた。沖縄好きで学生時代から通い、泡盛は糖質ゼロなので大好き。

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