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かんぽ不正契約の拡大 経営責任は逃れられない

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 保険料の二重取りなど、かんぽ生命保険が顧客に不利益を与えた疑いのある不正契約が18万3000件に拡大した。当初判明分から倍増し、今後、さらに膨らむ可能性が高い。

 問題発覚から1カ月以上たって謝罪会見した日本郵政の長門正貢社長は「(不正)件数が異次元に膨らんだ最近まで問題の重要性を認識できなかった。取締役会で議論したのも7月24日が初めてだ」と釈明した。

 日本郵政は4月にかんぽ生命株を売り出しており、「不正を隠していた」との疑惑も浮上している。長門社長は「全くのシロ」と反論したが、問題の認識がこれほど遅れた理由が理解できない。

 かんぽ生命は、郵便局員が顧客に無断で保険契約申込書を偽造するなど保険業法違反事例が昨年度に22件あったと金融庁に報告していた。

 いくつかの事案は、日本郵便が昨年4月や9月に発行した全郵便局員向け社内文書で紹介されてもいた。

 今年1~2月のかんぽ生命の社内調査では、昨年11月の1カ月分だけで顧客に不利益を与えた疑いのある契約が約5800件あったことも分かっていた。

 長門社長は、日本郵便とかんぽ生命が2017年に両社長をトップとする対策本部を設け、適正販売に努めてきたとも訴えた。だが、それだけ、顧客の苦情が多く、深刻だったからだろう。

 不正の温床と指摘されている過大な販売ノルマの背景には、日本郵政が100%子会社の日本郵便の収益向上策を描けてこなかったこともある。郵政民営化法で全国一律サービスを義務づけられた日本郵便は運営費がかさむ一方、郵便物の大幅な減少などで収益確保に苦しんできた。

 日本郵政は豪物流会社の買収で海外進出を狙ったり、郵便局用地を活用した不動産事業強化を探ったりしてきたが、成果が上がっていない。

 15年の株式上場後も日本郵便の成長戦略が描けない中、結局、ノルマ営業の強化による収益確保策に走ったのではないか。

 長門社長は「経営改善の陣頭指揮をとる」と引責辞任を否定したが、目先の利益を最優先に郵便局への信頼を裏切ったとすれば、責任は重大だ。信頼回復には、経営陣もビジネスモデルも刷新が不可避だろう。

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