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社会部、ワシントン・エルサレム特派員などを歴任した大治朋子専門記者によるコラム。

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「李香蘭」という夢幻=玉木研二

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 「りこうらん」という名の響きに、ある時代の感懐を共有する人はもうほとんどいないだろう。

 私の戦前世代の亡母は、その大人気を現中国東北部にあった旧満州国の皇帝名と共に覚えていた。

 彼女は父の仕事で1920年に中国で生まれ、中国人の養女となって李香蘭と名づけられた。まず歌手、次いで日本の国策会社満州映画協会から女優に。日中戦争は泥沼化、日本で国家総動員が進む。

 日本語に堪能な、美しい中国人娘。そう作られたキャラクターは李香蘭の本意を超え、独り歩きした。現実と隔たる夢幻のような魅力は、時代に息苦しさを感じる人々を引き寄せる。事件が起きた。

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