連載

ブラック・チェンバー・ミュージック

米朝の駆け引きが続く国際情勢を背景にしたフィクション小説。著者は阿部和重さん、写真は相川博昭さん。

連載一覧

ブラック・チェンバー・ミュージック

/7 阿部和重 写真・相川博昭

  • はてなブックマーク
  • メール
  • 印刷

 そのため「なぜですか?」とつづけて訊(き)いてみると、「わたしはいまだ公表されていない、ドナルド・トランプのほんとうの三男なのですから」との返答があったことをタクシードライバーはよくおぼえているという。

 冗談なのだろうと解釈し、ドライバーはおおげさな笑いで応じたものの、話はそこで終わらない。

 母親は日本人であり、一九八〇年代のなか頃にニューヨークへ語学留学していた彼女はそのときに父ドナルドと恋仲になり、この自分を身ごもったのだ。そんなふうにさらりと、自称非嫡出子はみずからの出生秘話を言いたしたようだ。

 旅行会社にはひやかしかまともじゃない客と見なされ、自称非嫡出子はあえなく追いはらわれてしまっている。

この記事は有料記事です。

残り619文字(全文924文字)

ご登録から1カ月間は100円

※料金は税別です

あわせて読みたい

注目の特集