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余録

だるま宰相と呼ばれて大正時代に首相をつとめ…

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 だるま宰相と呼ばれて大正時代に首相をつとめ、その後2・26事件の凶弾に倒れた高橋是清(たかはし・これきよ)はケインズ理論を先取りした財政家として名高い。その彼は若いころ、留学先の米国で奴隷として売られたことがある▲仙台藩から留学したおり、仲介役の米国商人にだまされたのだ。英語がよく分からないままに署名したのが身売り契約だった。高橋少年は働き先の主人に言われて奴隷契約を知り、留学生仲間とも相談、交渉の末に自由の身となった▲信頼した仲介者がこちらの弱みに乗じ、とんでもない契約をさせていた。怒り心頭に発したろうが、自力で窮状を脱したところに大器の片りんがうかがえる。で、こちらの若者が勝手に売られたのは今や自らの分身である個人情報だ▲「内定辞退率」とは就活中の学生の個人情報をもとに人工知能(AI)が算出した予測データという。就職情報サイト「リクナビ」の運営会社は当の学生の同意を得ないまま、個人を特定できる形でこのデータを企業に販売していた▲その数約8000人分というが、同社が同意を得たと説明する就活生に示された規約文もこんな背信を予期させるものではなかった。企業と対等の就活を手助けしてくれるとサイトを信頼し、「分身」を売られた学生はもっといよう▲この予測データの販売が廃止され、東京労働局が調査に入ったのも当然である。もちろん将来の「大器」もいよう学生たちも黙ってはいない。「信頼できる仲介者」を一段と厳しい目で選ぶことになろう。

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