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社説

「EU離脱」への警鐘 英国売りは始まっている

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 英国人にとって通貨ポンドは、買い物の際に支払う「お金」以上の意味を持つ。独立した国家としてのアイデンティティーであり、国民の誇りである。他の欧州諸国と一線を画し、単一通貨ユーロに参加しなかった大きな理由だ。

     そのポンドの価値がどんどん目減りしている。欧州連合(EU)のくびきから解かれようと「離脱」を自ら選択した結果、コントロールのきかない通貨安に振り回されようとしているのだ。皮肉な現象である。

     離脱が決まった2016年6月の国民投票前に比べ、ポンドは対ドルですでに18%以上、下落した。

     ジョンソン新首相となり、EUとの合意なき離脱がより現実味を帯びたことで、一時、収まっていたポンド売りが復活、加速した。史上最安値を更新する可能性も市場ではささやかれている。

     計画性のない離脱により、英国が失うEUの恩恵の大きさを、為替市場が警告していると見た方がよい。

     実際、国民生活へのしわ寄せはすでに始まっている。

     ポンド安は、衣料品からお菓子まで、EU内外から輸入される品々の自国通貨建て価格を押し上げる。1世帯あたり年間404ポンド(約5万2000円)ものコスト高になっているとの試算もあるようだ。

     一方、自国通貨安は通常、輸出を増やす効果が期待される。ところが、EUとの貿易関係が見通せない状況下で企業は、生産増強のための設備投資に動きづらい。

     結局、輸出への貢献は限定的と言わざるをえない。

     投資や消費にブレーキがかかれば、景気全体が長期にわたり停滞する恐れがある。ところがポンド安下では、景気刺激のための利下げも実施しにくい。利下げが一段の通貨下落と物価上昇をもたらすためだ。

     ポンド安は日本人も含め、英国を訪れる外国人観光客には朗報かもしれない。しかし、欧州市場の拠点として魅力的だった英国から他の加盟国へと移転を余儀なくされる企業は新たなコストを負わされる。

     EU離脱が強いる犠牲はあまりにも大きい。ジョンソン首相は、市場が発するシグナルに目を凝らし、売り物の楽観主義では乗り切れない現実をしっかり見据えるべきだ。

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