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就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアが、人工知能(AI)を使って就活生の内定辞退確率を予測し、本人の同意が不十分なまま企業38社に売っていた。
就活生の間に「就職活動の味方だと思っていたが、裏切られた」との怒りの声が広がっている。
リクナビは、年間約80万人の就活生と企業3万社超が活用する就活プラットフォームだ。昨年3月から内定辞退率予測を1社当たり年400万~500万円で販売していた。
仕組みは次のようなものだ。リクナビ側が企業から前年の内定辞退者名簿をもらい、個々人がサイトでどの企業の情報をどれだけ閲覧していたかなどをAIで分析した。この分析結果を今の就活生に当てはめて、内定辞退確率を5段階で予測した。
個人を特定した予測データは個人情報保護法の「個人情報」に当たり、外部提供に本人の同意が必須だ。
リクナビ側は利用規約に「行動履歴を分析し、採用活動補助のために企業へ提供する」と記したことを根拠に同意を得ていたと主張する。
だが、学生が就活に不利になりかねないデータの提供だと十分に理解して同意したとは考えにくい。リクナビ側は「企業と採用判断に使わないと約束していた」と弁明するが、企業が予測を買ったのは、内定を辞退する可能性が高い就活生を把握するためだろう。
購入した企業側の責任も問われる。職業安定法は労働者募集の際に企業が第三者から個人情報を取得することを原則禁じている。予測の購入はこれに抵触する可能性がある。
企業は自社の就活生データをリクナビ側に提供したが、本人の同意がなければ、個人情報保護法違反だ。
リクナビ側は予測サービス廃止を発表し、就活生7983人について同意が不十分だったと認めた。
しかし、予測対象となった就活生の全体数や、購入した企業名は公表していない。発表文を一方的に出すだけで、記者会見も開かない姿勢も不誠実と言わざるを得ない。
産業界では個人情報を活用した「ビッグデータビジネス」が注目されている。来年には個人情報保護法が改正される見通しだ。ビジネス展開は、個人がデータ提供の利害を理解して同意することが大前提だ。