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ブラック・チェンバー・ミュージック

/11 阿部和重 写真・相川博昭

 それになにより出もどりの自分をあっさり受けいれてくれた恩がある。わずかでもへまをしでかした人間を見つけては、こぞって血まつりにあげずにはいられない俗情がはびこるこの高度に情報化した世知がらいご時世、これはそうそうあるこっちゃない尊い歓待だとありがたく感じている。

 前回ここに住んだのは、映像制作の専門学校を卒業してほどない駆けだしの頃だった。その当時は、飛びこんだばかりのプロの仕事現場に適応するのに必死だったから、水道料金に不審の目を向けられるような余裕はなかった。二度目の契約更新を機に、おなじ町内の新しくて間どりのいいマンションへひっこしたので、この築古物件で暮らした最初の期間はまる四年間になる。出ていったあとはそれっきり、近所を通りかかっても顔なんか見せなかったしがめつい大家夫婦やぼろアパートのことは思いだしもしなかった。のぼり坂の人生にあって調子に乗…

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